僕と幼なじみとそれから……

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 幼なじみが死んでから、早くも数ヶ月が経過し、冬の寒さがより一層感じられるようになった。  幼なじみは僕にとって、妹みたいな存在である、そんな幼なじみが死んでしまったことにより、中学にも行かず、僕は自室に引きこもるようになった。  幼なじみの死を認識した際は狂った。そんな、まさか、よもや、冗談じゃない、しかし、それは現実だった。  幼なじみの葬式に参列したりすることによって、不謹慎な与太とも思われたそれは、僕の中に浸透していく。  常時這い寄る、残酷な現実を紛らわすのは、ゲームやアニメなどの娯楽作品である。それらに興じている際、僕は全てを忘れた気になった。  今では、それが原因で昼夜逆転生活を送るようになってしまった。  そんな僕の日課は、自室の窓から見える、幼なじみの部屋を覗くこと。僕は現実逃避をしているに違いない、居ないと分かっていても、もしかしたら、と淡い期待を胸にカーテンの隙間から、幼なじみの部屋を見るんだ。  大抵は、その部屋は真っ暗で、空虚な箱だったが、今日は違った。電気がついていて、部屋に何者かがいる。  髪が長いことから、女性であることが判明した、当初は幼なじみの母親かと考えたが、思い出してみれば幼なじみの母親はパーマをかけていたので、違う。  僕は湧き出るフラストレーションのまま、観察を続けた。  部屋にいる人物がこちらを向き、素顔があらわになる。  二十代後半位だろうか、彼女は刃のように切れ長の瞳が印象的で、キャリアを積んだビジネスウーマンのように格好いい女性であった。  クールビューティーという言葉は彼女ためのみに存在するかと勘ぐるほど、その一言に尽きる容貌をしている。  彼女は幼なじみの親戚か何かだろうか? 僕は訝しげに幼なじみの部屋を彷徨く彼女を眺めていた。
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