story2.私の百花繚乱物語

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 体育館で新入生も含めた全校集会。 『続いて生徒会長挨拶と生徒会役員の紹介です』 司会の先生の言葉の後に生徒会長の高園先輩が壇上に上がると体育館がわずかにざわついた。 『皆さんおはようございます。生徒会長の高園悠真です』  カリスマ性って高園先輩のような人を言うのかも。高園先輩が壇上に上がったそれだけで体育館の空気が彼に支配される。 芸能人がステージで舞台挨拶しているみたい。 『では僕から生徒会役員の紹介をします』  高園先輩の隣に生徒会役員が並ぶ。一年生の女の子達には心臓発作を起こさないように事前の注意書きが必要だ。我が杉澤学院高校の生徒会長と副会長は超絶の美形なんだから!! 私なんて二人が並んだ場面を見ただけで心拍数上がりまくって大変。  朝に女の子達が騒いでいたけど、木村先輩の髪の色が黒に変わっている。3月の時は金髪に近いような茶髪だったのに今は落ち着いた黒髪。でも真っ黒じゃなくて焦げ茶色っぽいオシャレな黒髪。 茶髪だった頃よりも大人びて見える。 『副会長の木村隼人です。1学期は新入生歓迎会や球技大会があります。期末テスト後には生徒会企画の打ち上げも予定していますので……』  周りを見ると女の子はみんな木村先輩の挨拶にうっとり耳を傾けていた。彼を好きな人はこの学校にたくさんいる。 学校の人気者の木村先輩は私には遠い存在の人。でもいいの。遠くから見ているだけで幸せなんだ。  私の高校生活は平和で平凡。目立つことが苦手で引っ込み思案な私の生活には劇的な変化も刺激もない。 将来の夢もない。大学進学のための勉強。 息抜きと言えば少人数で廃部寸前の園芸部で学校の花壇の手入れをすること。 園芸部は三年生がいないから私は二年生なのに部長になってしまった。何かのリーダーになることが初めてで部長の肩書きは不安しかない。  こんな臆病者が一年前に木村先輩に告白できたのは奇跡だ。……振られたけど。 私は木村先輩に憧れているのかもしれない。私と違ってみんなの人気者でキラキラしている木村先輩に憧れて、それを恋と勘違いしているのかな? 幼稚園、小学校、中学校と恋愛に縁遠い人生を歩んできた私には恋が何なのかよくわからない。 私が憧れじゃない恋ができるのはいつになるのか……。
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