61人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
17.集められた三人(side 隼人)
原宿で男達に無理やり車に乗せられてからどのくらい経過しただろう。
後部座席の窓はスモークガラスになっていて外の景色は見えない。聞こえるのは窓に当たる雨粒の音のみ。
隼人は後部座席の中央に座らされ、両隣を大柄の男二人に挟まれていた。三人乗りの座席でも乗る人間のガタイがよければより窮屈に感じる。
どこに行く、お前らは何者だ、何故こんなことをする、隼人の質問を男達はすべて無視。持っていた荷物も取り上げられ、携帯電話も没収され、今の隼人は大人しく車に乗る以外にはなす術がない。
車が停車した。後部座席の左隣の男が先に降りた。右隣の男が隼人に顔を向ける。
『両手を出してください』
『なんで?』
『先ほども言いましたよね? 我々の言う通りにしないとどうなるか』
有無を言わせぬ態度だ。ここは従うしかないと諦めて隼人は組んでいた両手をほどいた。男が隼人の両手首に銀色の手錠を嵌める。手錠での拘束はすでに犯罪の域だ。
『降りてください』
男の指図で仕方なく車を降りた隼人は周囲を見回した。辺りは薄暗く、虫の鳴き声と木々のざわめきが聞こえる。雨は止んでいたが、空気中に漂う雨の匂いと地面の大きな水溜まりが嵐の余韻を残していた。
ここは東京の都心ではない。移動距離から考えて多摩方面か埼玉方面、目視できる範囲に住所や地名を示す看板はなかった。
前後左右を男に囲まれて誘導されるがまま湿ったアスファルトを歩いていくと街灯に照らされて浮かび上がる建物が見えた。二階建てのプレハブ小屋だ。
前を行く男が扉を押し開けて中に入る。部屋は明るく、冷房も効いていた。そして隼人の予想通り部屋には亮と悠真がいた。
『やっぱり隼人もか』
『これで三人が揃ったな』
パイプ椅子に座る二人の両手首には隼人と同じ銀色の手錠が嵌まる。
『悠真もかよ。陽平から亮が男に連れて行かれたって連絡もらってさ』
『あー、陽平に見られていたのか。でも拉致られたのは悠真が最初らしい』
『不本意ながらね』
『お話中のところ申し訳ありませんが木村様、そちらの椅子におかけください』
男が悠真と亮の間に用意されたパイプ椅子を示した。部屋に並ぶ椅子はあと一脚。
『晴は?』
『まだ来てない』
隼人に聞かれて悠真が首を振る。このメンバーが集められたのなら残るひとりは晴だろう。
『緒方晴様もじきにこちらにいらっしゃいます』
隼人と悠真のやりとりを聞いていた男が愛想良く微笑んだ。表情は笑っていても目は笑っていない。薄気味悪い男達だ。
『いい加減あんた達の目的を教えろよ』
『私共からは何も申せません。私共の仕事はあなた達をここにお連れし、監視をすることだけです』
亮が問い詰めても男達は答えを渋る。亮も悠真もここに来るまでの間に何も聞かされていないようだった。
部屋には隼人を連れてきた四人の男の他にあと二人の男がいて、監視役は計六人。
(晴もじきに来るってことは拉致られたのか……?)
男達に命令を出し、自分達をここに集めて何かを企てようとしている人物がいる。
誰がこんなことを?
最初のコメントを投稿しよう!