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1.序章(3)
長谷川直希と名乗った少年は始めは15歳だと言い張っていたが、芹沢に問いただされていくうちに まだ11歳の小学生だと白状した。
その小学生がこんな平日にフラフラ街を彷徨っていることからも、すぐに家出だと分かる。
不審な様子で部屋を見回しながらも、出された食事にパクつく子どもの様子をじっと観察していた。
彼は11歳にしては大人びているような気がする。
成長が早いのは男子にとって必ずしもいいとは言えない。
なぜなら止まるのも早いからだ。
その事を差し引いたとしても直希は間違いのない正統派の美形だった。
色も白く間違いなく9割の女性がイケメンだと認める癖のない顔立ち。
捜したからと言って、そう簡単に見つかる素材じゃない。
これなら女子から間違いなくモテるに違いなかった。
一体何が悩みだ。
今の段階で思いつくのは男子からのやっかみくらいだが、それでも男ですら敗北をすんなり認めるであろう彼の容姿からは、その悩みを想像出来なかった。最も、他人の悩みが他人にわかるわけもない。
家庭が原因の要素が大きいかもしれない。
幾つであれ寂しさに人は耐えられない。
「キッズ」 に応募してくるのは、何もアイドルを目指す男の子ばかりじゃない。
やることが無く寂しい子。
苛められて学校に行けない子。
親の関心を引きたい子。
理由は様々だった。
そんな多数の子どもを見て来た芹沢は、思春期の少年の気持ちをよく理解しているなどと言われていい気になっていたが、肝心の自分の息子の気持ちには全く気づかないでいた。
いかに寂しく絶望していたか…
彼は知る由もなかったのだ。
仕事にかまけて家庭を顧みなかった彼の息子は、わずか12歳で自らこの世を去っていた。
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