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3.直希※
ホテルの一室に着くなり激しく口づけを求められていた。
口の中で暴れる舌が一段落するタイミングで口を離す。
「いけない人だな…
俺を社長のとこに戻さなくていいの…?」
直希は少し冷めた眼差しで東郷を見上げた。
〔社長は海外だ。 最低でも三日は戻らないさ。〕
「ふ…ん。」
東郷の表情が先ほどとは打って変わって優しくほぐれていた。
冷たい反応しか返さない直希をきつく抱きしめる。
彼はすっかり直希に溺れていた。
〔会いたかったんだぞ。〕
逞しい腕に抱かれながら、そんな熱っぽいオッサンの言葉にシラけていた。
直希は東郷の頼りになりそうな大人な感じが、初対面の時から好きだった。
それは彼に直希の父親の姿を求めたのかもしれない。
だが、東郷の努力が実って直希をドラマに続けざまに出始めた頃、手を出してきた段階で覚めた。
そのために今まで優しかったのかと思うと、直希は吐き気がした。
最初はいい様に直希を利用しようとしていた東郷だったが、強い意志をもち自分に依存しない直希に、いつしか執着するようになっていた。
全身をくまなく男の手がはい回り、濡れた感触が辿っていく。
割り開かれた腰の間に東郷の頭が降りる。
直希の敏感な膨らみを口内に包んて、柔らかい粘膜がねっとりと包んでいく。
「うっ…あ…。」
クチャクチャと隠微に濡れた音が室内に響いていた。
妻子がいながら自分の体をまさぐる男の手を、冷たい思考で観察していた。
鬱陶しいとすら感じる。
快楽の波に没頭できない。
付き合う男としては申し分のない丁寧な扱いだった。
もしかしたら、初めて直希を抱いた相手が東郷だった事は、彼にとって幸いだったのかもしれない。
だが、ずるずると愛人のような関係を続ける気など欠片もなかった。
人気が爆発的に上昇している今、スキャンダルの元は絶った方がいい。
直希はそっと東郷に腕を伸ばす。
応えるように頭が同じ高さに上がってきた。
そんな東郷の首に腕を回すと、普段からは想像もつかないような淫蕩な微笑を浮かべる。
東郷の体が熱くなり、中心が一際大きく漲っていた。
「東郷さん…。」
〔何だ?〕
「こういうの何て言うか知ってる…?」
愛撫するように、猛ったものに直希が優しく触れる。
〔…なん……だ…?〕
「淫行…。」
驚いた顔を見せる東郷は言葉を失っていた。
「下手したら捕まるね。」
そう言って、唖然とする相手に怪しく微笑んでいた。
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