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「シャワーが壊れてるだと!?」
レヴィの突然の大声に顔を上げれば、なにやら電話中らしく片手で"悪い"のジェスチャーが。仕事を再開するふりをして聞き耳を立てる。
「勘弁してくれ、汗まみれで帰れって言うのか?せっかくのカマロが台無しになるだろ!」
盛大なため息と共に天を仰ぐレヴィ。相手の話までは聞こえないが、多分男だ。
「ホテル?ダメだ、あそこは水しか出ないだろ。……そっちは高い、それともお前が出してくれるのか?」
『ホテル』という単語に反応してしまう。一体何の話しをしてるんだ?
「……あぁ…OK、とりあえず週末までには何とかしてくれよ。」
レヴィが電話を切ったので慌てて手元の書類にサインをする。しまった、ちゃんと読んでいない……まぁ、いいか。
携帯をスーツの胸ポケットにしまってキッチンに向かうレヴィに声を掛ける。
「今度休みがあるだろう、何処か食べに出かけないか?」
努めて自然に話す。視線は書類に向けたままだ。
「構わないけど、何時から?」
冷蔵庫からコークを取り出しながらレヴィが返事をする。さて、"週末のお約束"とやらは何時なのか。
「昼過ぎはどうだ?ランチの波が引いたくらいがいいかな。」
「あー……ディナーじゃダメかな?昼はちょっと先約があるんだ。」
ピクリ。眉が動きそうになるのを寸でで止める。
「OK、じゃあレストランでも予約しよう。」
「Thank you.」と笑ってコークを飲む横顔に微笑み返す。
レヴィにそういう"オトモダチ"がいても仕方はない。レヴィは魅力的だしとびきりの色男だ、男も女も自然と寄ってくる。若いのだし、13歳差を埋めるのは容易ではない。
だが、仕方がないのといてもいいはイコールじゃない。存在を見せつけられた上で行ってらっしゃいと言えるほどディラン・ガルシアは出来た男ではないということだ。そもそも、先約とはいえデートを断られるのは腹立たしい。しかも相手はホテルを拒否して家にまで行く仲らしい。───ますます気に食わない。
さて、今夜はどうしてやろうか。
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