止まない''雨''

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僕は物心がついた頃からずっと、外へは出ていない。見たこともない。灰色で冷たくて硬い壁に囲われた狭い部屋。窓もない。そこに、ずっとママと2人。ママはいつもこう言う。 「外ではずっと大雨が降っているの。音がするでしょう?雨の音よ。こんな中外へは行けないわ。」 ダダダダ、ダダダダダダダ、と外からはいつも音がする。時々大粒の雨が家に打ち付ける音も。確かにこんな中外へ行ったら危ないだろうなあ。でも、いつか雨、止まないかな。外、行ってみたいなあ。でも、外は雨が降ってて、危ないよね。 でもママは時々外へ行く。重たそうな扉の隙間から光がさすことはないから、きっと外もここみたいに暗いところなんだろうね。一回、一緒に行きたい、ってねだったけどダメだった。 「今は雨が降ってないけどまたいつ降り出すかわからないわ。危ない雨の中へあなたを連れ出すことなんてできない。」 いつもママは出かける前、壁に耳をつけて雨音がしないか確かめる。それからゆっくり外に出る。やっぱり外は危ないんだね。それと、出かける前にいつもこう言うんだ。 「もしママがずっと長いこと帰ってこなくて、とてもとてもお腹が空くまで帰ってこないことがあったら、そこの蓋を開けて、下の階に下りなさい。奥に食べ物があるから、少しずつ食べるのよ。ママがずっと帰ってこなくて、とてもとてもお腹が空くまでは食べちゃダメ。」 ママはいつも外から帰ってくると少しだけどご飯をもってきてくれる。ママはほんの少ししか食べないで、僕にくれるんだ。またそのご飯がなくなったら外へ行く。帰ってくるとママはとっても疲れてる。 「雨止んだ?」 って聞いても、いつも 「いいえ。外に出てはダメよ。」 ってしか言わないんだ。 外、出たいな。雨、止まないかな。 またすぐそこで、雨の音がする。 ダダダダダダダ、ダダダダダダダダダダダ…
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