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静かな闇の中で
日の落ちた静かな暗い森の中で、ザクッサクッザクッっと土を掘る音が周囲に響いている。地面に置いたライトだけが周囲を照らして、青いビニールシートにくるまれた物体が彼の影を不気味に浮かび上がらせていた。
俺は、いつものように楽しみの後の後片付け中、詰まらないことを思い出していた。毎回思うのだが、何故皆揃いも揃って「何故私がこんな目に合わなければならない!?」
っと呟くのだろうか?っと。
俺がアレらと出会ったのは数年程前、日課の夜の散歩をしていた時だった。満月が優しく光を投げ掛ける良い夜だった。
コンビニでツマミとビールを買い帰って飲むかっと浮き浮き歩いて居たのだが、いつもの慣れた道なのにも関わらず妙な違和感を感じる。
シーンと音が聞こえてきそうな静けさなのにまるで捕食者に狙われているような緊張感が走り、背中に冷や汗が垂れる。逃げるべきか抗うべきなのか? それとも大人しく喰われるべきなのか。
次の曲がり角、路地が危険と何かが叫ぶ。本能が勝てない危なすぎる逃げろっと叫んでいる!
けれど、俺は好奇心に負けて次の路地に突っ込んで行った。
人影がない筈の路地に、恐怖の象徴であり人類の天敵である奴は居た。あってはならないか弱い女性を捕らえ挙げ句の果てにその細い首筋に牙を突き立て、旨そうに血を啜る奴を見つけてしまった。足が地面に着かない程の巨体が居た。
「ひっ」思わず声が漏れて、ビニールを落としてしまう。反射的にしゃがんでしまう。
ガツンっと音が響き、奴の目が此方を見て獲物を見つけた顔に瞳が爬虫類のように変化していく。
そして、消える筈の無い巨体が、一瞬で目の前から消え、近くの壁が吹き飛ぶ。瓦礫の側で巨漢がニヤリと嗤う
「ヤ……ヤベエ……退路を絶たれた。これは絶体絶命って奴だ。こういう時、伝奇ものだとすげえ感じの姉ちゃんが助けてくれる筈! つまり俺は助かる!」奴を見詰めながら、意味不明な事を呟くと石を拾い起き上がる。
「もう現実感が無さすぎて、怖いのがぶっとんじまったよ」っとニヤリと笑って奴を見詰め石を投げる。もう破れかぶれ。
奴に簡単に回避されもう終わりか……と観念すると、刃物の光が奴を捕らえた。何言ってるかわからないと思うが俺も判らない。だって、刃物振り回すとかアニメとかでしか見たことない。あぁ、最近ニューチューブで見たわ。奴の血が俺にふりかかり、奴は逃げていった。刃物振り回した奴も軽く俺を一瞥して消えた。
ん……辺りには絞りかすになった女性の死体と血に塗れた俺とビールとツマミ。
逃げるか……ぼーっと働かない頭で逃げる事にした。口の中が激しく鉄錆臭い。シャワー浴びたい。
サーっとシャワーが流れる音。いやぁ、血塗れになった後のシャワーって泣けてくる程、気持ち良いね。お湯の温度でほっとする口も濯いでサッパリしてる。Yシャツやらスーツやらの血は落ちないらしいから、処分に困るけど何処かで燃やすか?しかし、体が熱い、そしてダルい。風邪でもひいたのだろうか?
全て明日に回そう、夜が明ければ土曜日だから、ゆっくりと考えよう……何て寝苦しい夜何だろう?汗だくになって明け方に起きた。
とても喉が渇いている。冷蔵庫を開けて腰に手を当て、牛乳をパックから直接飲む。ゴクッゴクゴクぷはぁ。旨い。しかし、まだ喉が渇く勘弁してほしい。結局、1リットル飲んでしまった。
だるさが引かずに結局夜まで寝てしまった。食料もないのでコンビニに買い出しに行く事にする。
今日もほぼ満月が優しく光を投げ掛ける良い夜だった。コンビニでチーズとビールそしてを買い帰って飲むかっと浮き浮き歩いて居たのだが、いつもの慣れた道なのにも関わらず妙な違和感を感じる。シーンと音が聞こえてきそうな静けさなのにまるで捕食者に狙われているような緊張感が走る。
この前と同じ感覚?だが、喰われる気がしない。この間の路地か?助けられるか?路地に走って入る。ろくに見もしないで、膝を蹴る‼️
バキッと音がして足が変な方向に曲がる、そして奴が倒れる。相手を確認して首を全力で蹴る。ゴキンッっと音がして一時的に動きが止まる。そこまで強く蹴ってない筈だけれども……
取り敢えず、被害者に駆け寄り声を掛けるも気絶している。どうしたものか?と考えてると、後ろから首を捕まれる。ギチギチギチギチヤバイ首が折られる。足をバタつかせ後ろを蹴りつけるが、効いてないようだ。奴は「殺す」と言うと締め付けを強めた。
意識が飛びそうになった瞬間。ザシュッと音がして俺は投げ出された。
奴の胸から木の杭が生えていた。シュコッと音がして奴の首が落ちてくる。
ゲホッゲホゲホゲホ 空気が、……んまい。
その後、少しだけ奴を杭で貫いたサイコ野郎と話ができた。
何とか教えを乞い、奴等の弱点を教えてもらい、半吸血鬼とか言われた。もう戻れない事も、教えられた。そうして、半年程修行して、ハンター見習いになった。
あれから、俺は夜中に獲物を探すようになった。俺達の中に擬態している奴等を喰らう為に。
「あんたを選んだ理由? そんなの決まってる。天敵だったお前らを食らう吸血鬼に俺はなったからよ。お前らは俺の餌なんだよ。大人しく喰われとけや」
そうして、吸血鬼の死体の処理に困る生活が始まった。
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