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Prologue〜とある冒険者の手記〜
中二病。
もしくはピーターパン・シンドロームでもいい。どっちにしろ、病気呼ばわりなわけだ。
君たちは、平和な日常をどこか退屈に感じ、うっかり非日常を夢見た時期はなかったか?
台風の接近や不審者情報に、不謹慎と分かりつつも不安と別のそわそわを感じたりするのは、確かに病気と認定されてもおかしくないようで、本当は、人間にインプットされた抗いがたい衝動なのかもしれないな。
そうだとしたら、こんな詮ないことを願ったことはないか?
ここではない、どこか別の世界に行きたいと。
剣と魔法の世界。発展した未来都市。荒廃したディストピア。ゲームの中の仮想世界。なんでもいい。
そこは自分の思い通りになる世界だ。空を飛び回ることも、超能力を操ることも雑作ない。どんな仲間や恋人も望むがまま。
だから人は、異世界を夢想して止まない。俺もその一人だった。
前置きが長くなってしまった。今、俺は、異世界でこの手記を書いている。
期待させてすまない、すぐに裏切ることになる。
確かに人類が夢にまで見た異世界が本当にあって、そこに突然召喚されたところまでは事実だ。
ただ、俺が夢見ていた都合のいい異世界とはやっぱりかけ離れていた。
予定では勇者として召喚されるつもりが、どうも、俺の役割は【餌】らしいのだ。参ったよ。どうにかここまで立ち直るまでに三ヶ月かかった。
そっちの世界に届くはずもない手記をこうして書き殴っているところを考えると、まだ少し錯乱が残っているのかもしれないが。
とにかく、俺から地球のみんなに言いたいことは一つだ。特に現在進行形で病人の子どもたち。いいか? よく聞け。
異世界なんて来るもんじゃない。勉強しろ!
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