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10月:アクエリアス
僕は何で外にいるの…?
ふかふかなベッドの感触がない。
背中に回っていた暖かさもない。
訳分からない光景に怖くなり目をつむって必死に自分に話しかける。
夢だ。これは悪夢なんだ。早く起きなきゃ。
腕や足を叩いたりつねったりしても景色は変わるどころか段々鮮明になっていった。
夜空だと思っていた暗闇の正体は厚い雲で、雷鳴が体に響く。
もしかして、僕は…。
「ねぇ、そこだと濡れちゃうから傘の下に入ろう?」
「だ、だれ!」
いきなり方に置かれた手を振り払って振り返ると、僕よりも少し背の高い男の子がいた。
知らない人…家族以外とは全然話さない僕にとって酷い悪夢だった。
「僕はポラリス。君はゲラーシーだね。」
「ゲラーシー…?僕の名前はゲラシム、ゲラシム・マリコフだよ。」
当てずっぽうで言ったのかな。
似ている名前を言われてびっくりしたけど…本当に知らない人だよね?
「そっか。ゲラシム、自己紹介をしたら知り合いになると思うんだけど、違うかな。」
名前を教えあったら、もう知り合い?
知ってる人なら話しても怒られないよね。
遠慮気味に頷くとポラリス君は右手を差し出してきた。これって握手、だよね。
慣れない行為に戸惑いながらもその手を掴み、
ふんわりと握り返されると雨の当たらない方へ連れてってくれた。
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