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「ポラリス君はここに住んでるの?僕、気付いたらここにいて…」
「もうここが現実世界だって理解したの?」
そんなに慌ててたのかな。
夢だと勘違いしてたのがばればれだ。
「雨が寒いのも、ポラリス君の手が暖かいのも夢じゃありえないもん。」
嵐のような景色と対照的だった温もりが嬉しくておどけてそう言った。
ベッドもお母さんも温もりをくれても、一人で見る夢でこんな気持ちになったことない。
繋ぎ直された右手を持ち上げたり、握ったりして初めての感覚を楽しんでいると思ってもみなかった質問をされた。
「現実世界を飛び出した感想を聞かせてよ。」
「それは、いつの間にか外にいたから…」
感想なんてないよ、そんな意味も込めて言葉を切れば突拍子もなくクスクスと笑い始めた。
「無意識って、それ程外に出たかったんだね。」
「ち、ちが…僕はそんなこと、」
こんな僕を愛してくれるお母さんを僕も愛していて、例え外を知らなくてもお母さんがいてくれれば…。
「気持ちの矛盾を無理やり辻褄合わせしたら、何時しか心が壊れてしまうよ。」
「ほんとだもん!僕が願ってこんな所に来たんじゃない!」
乱暴に手を離して出したことも無い大声でそう言い返した。でも全く動じない。
「ゲラーシー・メリニコフ、自分を捻じ曲げないで。」
「僕はゲラシム・マリコフだ!」
がむしゃらに走り出しても小さな島では行く先がなくて、僕は考えもなしに海へ飛び込んだ。
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