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11月:アンドロメダ
雲に紛れて今日ここに来る者を待っていると、何も無かった砂浜に段々グラデーションが濃くなるように、人が現れた。
毎月同じ現象に対して今回は少し特殊だった。
たった一人しか来れないこの場所複数人に来るのはいくつかの条件を満たした時だけ。
まさに奇跡的な客人だ。
男性が目覚め、隣の女性を起こし始めたところで僕は島の中央に降り立ち、彼らと対面するのを待った。
数分もすれば雨宿りをしに2人がやってきて、漸く視線が交わる。
「私たち以外にも人が…」
「あぁ、そうだね。取り敢えず木の根元で休もう。」
女性の頬が腫れていて、意識を手放す前に修羅場があったことを再度確認する。
男性に支えられて腰を下ろした女性はまた僕の方を見た。
「勝手に私有地に入ってごめんなさい。でも私たち目が覚めたらここにいて…。」
「大丈夫だよ。ここは僕の居場所であって、僕の島じゃない。」
「ふふ、変なこと言うのね。私はアンジェリカ、彼はヘドマンさんよ。」
物腰柔らかいアンジェリカは自己紹介をしてくれた。パトリックの名前を呼ぶのを照れてファミリーネームを教えてくれたけど、二人の雰囲気は恋人そのものだった。
「僕はポラリス。」
短くそう言うとパトリックは石のように固まった。どうやらここがどこなのかわかったみたいだ。すっと見上げて傘を見やる。
「驚いた…俺がここに来るなんて…。」
呟きはアンジェリカにも聞こえ、不思議そうにパトリックの視線を辿った。
切れ間ない雨が打ち付けられる傘は無機質に居座っている。
彼らの世界では見ることの無い光景だ。
パトリックは微かに動揺し、アンジェリカに至っては壮大さに見惚れていた。
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