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8月:リブラ
疲れてたからその日はぐっすりと深く眠ったんだ。夜風だけじゃ少し暑かったけど、それもものともせず意識の奥深くまで。
そして気付いたら波打ち際に座ってた。
夢って浅い眠りでしか見ないらしいけど、現実的に考えてこれは夢だ。
だって僕は自分のベッドで寝てたんだからね。
時折当たる波が冷たくて心地いい。
優しく吹く風もひんやりとしていて、何より天から落ちる雨が体をどんどん冷やしていく。
そろそろ風邪を引いてしまいそうだったから立ち上がって陸の方へ上がる。
夢の中で風邪を引くのも変な話だけどね。
小さな島に建物はなく、真ん中に生える一本の植物を辿って見上げればそこには大きな傘があった。きのこじゃない、雨の日に差すあの傘だ。
これが僕の想像力なんだと思うとちょっと笑っちゃうね。
小さな島に大きな傘。
友達やテレビなんかでよく聞く話がそっくりそのままあるんだから。
聞いてる時は適当な相槌を打ってたけど、本音は気になってたって事?
そっと傘の柄にあたる部分を触ると、感触は植物そのものだった。傘なのに植物と言うのが不思議で上の方や根っこの近く、好奇心で無心になる。
裏側に回るとそこには僕と同い年くらいの男の子が座っていた。
気配が感じられなかったけど、いつからいたんだろう?
知らない人だけど、無視するのも何だから声を掛けた。
「ねぇ、隣に座ってもいい?」
「どうぞ。」
大人びた返事を聞いて遠慮なく男の子の左に座る。視界が遮られることなく見えるこの景色は、ここが孤島だと言うことを知らしめてくれる。
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