9月:アクイラ

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9月:アクイラ

目まぐるしい世界で過ごしていた時はこんなにも遅く感じることはなかった。 まさに平和過ぎる毎日にいると2ヶ月があっという間とはいかなかった。 漸くだ。 僕は君と対面し、膝を付けずにはにはいられないだろう。 火照る身体に当たる雨は優しく、矛盾してるけど暖かく感じた。 島全体に影を落とす色とりどりの傘は噂に聞いてた通りで、年甲斐もなく少年のようにわくわく胸が踊る。 波打ち際から芝生へ、大きな幹の根元まで来れば会いたかった人が居るだろうと思ったけど、予想とは裏腹に人気はなかった。遂に来れたと言うのにまさか僕一人しかいない? 心がざわつき、それを鎮めるために幹に寄りかかる形で座って深呼吸をする。 大きな傘も降り続く雨も噂に違わない、だからきっと彼も居るはずだ。 一度目を閉じて再度深く、深く呼吸をする。 ゆっくりと瞼を震わせながら開くと、そこには黒髪の少年が立っていた。
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