確証

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 選手達に動揺が走った。三年である矢島に来年はない、正真正銘の部活動最後の大会である。その決勝戦、大将という大役を与えられ、それを無下に断ることなど誰ができるであろうか!  選手の動揺をいち早く察知した監督が口を開く。 「どうしてだ、矢島。決勝だぞ、大将だぞ?」 「相手の大将である堀田が強いからです!」 「確かに、堀田は同年代の中ではトップクラスの選手ではあるが……」  監督の言葉が途切れたのを見計らった矢島はここぞとばかり、能面のような感情のない表情で唾を飛ばした。 「そうでしょう、私には勝てる見込みなど到底あるとは思えません。私は部活ではどちらかといえば不真面目な方で、評点の為に部活をやっているといっても過言ではありません。このような大事な試合、かつ大将という大役には、やはりキャプテンが適任であると思いませんか? キャプテンはとても真面目に部活動に取り組んでいます。朝練も毎日欠かさずやって、部活が終わった後も一人残り練習に勤しんでいるのです。それに監督は知っていますか? キャプテンは部活に精を出し過ぎたせいで成績がどんどん落ちていることを。一年の時のキャプテンは学年でもトップテンに入る実力者だったんです、それが三年の今では見るも無残に落ち込んで下のトップテンです。それ程までに頑張って頑張って頑張り抜いたキャプテンが堀田以下、ましてや私以下。実際その通りであっても、監督自らその烙印を押してしまうだなんて如何なものでしょう。それに相手の堀田は強く、話しでは何人もの選手が再起不能になったと聞いています。そんな相手に、学力と顔面の偏差値が高い、将来有望な私に何かあったら監督はどう責任を取るのですか? それならば顔もいまいち、頭も悪い、真面目さだけのキャプテンが大将に適任であると私は考える次第です」
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