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――ああ、私のバカ。ほんとにバカ。いくらお見合い面倒くさくて、誰を選んでも適当に流すつもりだったからって!
内心、頭を抱えるしかない。そして言えるはずがないのだ――母が持ってきた大量のお見合い写真。その中で、彼の写真にだけ愛犬の歯形がついている、なんて事実は。
この中の一人だけでも見合いしろ!と写真の山を置いていった母。めんどくさかった私は、ごろごろとねっころがりながら愛犬クッキー(トイプードル・♂)とその写真達を使ってフリスビーで遊んだのである。
で、クッキーが上手にキャッチできた写真が、彼のものだった。私はろくにデータも見ずに“じゃあこれでいいやー”と母にぽーいとしてしまったのである。きっとクッキーからすれば、写真の人物が美味しそうなお肉か、はたまたまんじゅうにでも見えたのだろう。
「よろしければ、息子を選んでくださった理由を教えていただけますか?」
うきうきと語りかけてくる孝の母。
その隣で真っ赤になりながら“養ってくれるといいな”とかとんでもないことをぼやいている息子。
私はひきつった笑みを浮かべて、どうにか答えたのだった。
「た、孝さん……犬が好きそうだなーって思ったもの、で、して……」
どうせ蹴るつもりの見合いとはいえ、向こうから断ってくれた方が有り難いのは間違いない。
彼が犬嫌いでありますように!と私は心底願ったのだった。
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