5人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
***
「おい、笛吹」
そして、その日のホームルーム。俺達の担任である百田先生(男性四十二歳、独身)は。入ってくるなり、笛吹の机を見て声を上げた。
「お前……偉いな!クラス替えしたばっかりだってのに、机綺麗にしてくれたのか!」
「え、え?」
「いいないいな、先生感心したぞ。うんうん、やっぱり新しいクラスは、綺麗な机で始めるのがいいよな。みんなも見習えよ!」
俺達がやったこと。それは――笛吹の机だけを、それはもうめいっぱい綺麗に掃除したことである。一部塗装が禿げてみすぼらしくなっていたところには、ご丁寧に塗装スプレーを上から吹掛け直した。ただでさえ、クラス全体の机がぼろっちくなっていたところである。一つだけ磨き上げられた机に、綺麗好きの百田先生が気づかないはずがない――俺達の目論見は大成功だった。
朝登校してきた笛吹も、机が突然綺麗になっていることに多少は驚いていたようだが。それ以上に、覚えのないことで先生に褒められて驚いている様子だった。とりあえず、最初の作戦は成功である。できればもっと笛吹にもびびってほしかったが、先生がファインプレーもしてくれたしまずまずの出来といったところだろう。
――よーし、次だ次!もっとお前で遊んでやるからなー笛吹!
なんせ、俺にはデータ収集の鬼である彼方という、こ心強い味方がついている。
笛吹の好きなもの嫌いなもの得意なもの苦手なもの、調べるのはわけないことなのだ。
最初のコメントを投稿しよう!