014029

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すでに行列になっているレジに、カゴひとつ持たず並んでいる紳士がいた。 「あの中井さんのを頂けますかな?」 常連なのだろうか? その生産者を知っているかのような口ぶりで、 ワンブロック何千万とする肉を注文した。 「支払いはいつもので」 チラッとしか見えなかったが、限度額無しのブラックカードのように見えた。 紳士は肉を受け取ると、礼儀正しく一礼をして人ごみの中へ消えた。 自分がカゴに入れた肉が、不意に安っぽく見えた。
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