014029

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麓からは何時間もかけなければならない 山奥の辺鄙な場所に不意に現れたその建物は、 別荘と言うよりも異様な雰囲気を放つ屋敷だった。 広大な門に出迎えられ、自分の場違いな要求を少し恥じたが、 (かね)は要らないという申し出と、 どこから沸き上がってくるのか、 その食欲を満たすためだけの欲望が、なぜか抑えられなかった。 奥へ進むと、例の紳士が玄関口で迎えた。 すでに調理したものがあるという誘いに、躊躇することなく乗った。 所詮は金持ちの道楽なのだ。 貧しいものに施して、自尊心を満たしているだけなのだ。 そう思えば、この待遇も悪いものではないと思えてきた。
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