届いて、届かないで。

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◇ それからの数日間は葵衣と顔を合わせることのない日々が続いた。 最近の葵衣が家にいることが多かっただけで、以前までは友紀さんを含む三人のすれ違う生活が当たり前だったから、元の生活に戻ったようなもの。 わたしが起きるよりも早く家を出て、わたしがいない間に一旦帰宅し、わたしが帰る前にまた出て行く。 そんな葵衣と面と向かうタイミングは、わたしが夜遅くまで起きているときだけ。 その時間さえも避けている今、葵衣と直接話すことはおろかメッセージのやり取りをすることもない。 後者に関しては、同じ家にいるのに携帯でやり取りをする必要がないという、随分と筋の通らない逃げ道なのだけれど。 日菜とはあれきり一度も話をしていない。 日菜がわたしを避けているわけでも、わたしが日菜を避けているわけでもないけれど、二人になることはない。 何かあったの? とクラスメイトに何度か聞かれたし、日菜が同じことを聞かれている場面に出くわしたりもしたけれど、お互いに『なんでもないよ』とそれらしい顔で流していた。 あの日以来、やたらと話しかけてくるようになった橋田くんとは昨日連絡先の交換をした。 半ば無理矢理というか、しつこかったからわたしが折れたのだけれど、橋田くんは気にしていないようで早速いくつかメッセージを送ってきていた。 寝る前に目だけは通して、おやすみ、と送ったら同じ返事を返してきたから、内容には特にこだわっていないのかもしれない。
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