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うそ……
転がっていた棒を掴むと、清四郎はわたしを押さえつけてた佐藤くんを振り飛ばした。
後のふたりが飛び掛かり清四郎の背中を羽交い締めにする。
どうして……ここに?
もしかして助けに来てくれたの?
3人を相手になんて無理に決まってるのに。
逃げて!でないと清四郎がやられちゃうっ!!
「ゲーオタをナメるなよ!」
叫んで背中のふたりを振り払う。
横から殴られて清四郎のくちびるが切れて朱が滲んだ。
そのくちびるを拭うと、相手に拳を鳩尾に叩き込み廻し蹴りで地に沈めた。
ハアハア
息を荒くして清四郎は滴る汗のまま、わたしの前にしゃがみこむと猿轡をほどいてくれた。
涙目で見上げるわたしを清四郎の腕がそっと包みこむ。
「……俺から、離れるな」
ぎゅっと強く抱き締められた。
「せい、しろう……?」
混乱してどうしていいのかわからなくなる。
清四郎の熱い吐息が耳に触れて小さく震えた。
「俺には朋実だけいればいい。見た目が変わったからって寄ってくるような女ならいらない。……いらないんだ」
懇願するような声。
わたしを抱き締める腕に力がこもった。
「……だって、だって、清四郎には好きなひとが……いるって」
わたし聞いて知ってるよ。
清四郎にはずっと好きなひとがいるんだって。
清四郎が真剣な眼差しでわたしを見つめた。
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