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とりあえず新作に出すまで(*´∇`*)
『10年目の約束』
グズでノロマ。
話しかければ震え、顔を上げさせれば泣き出しそうな表情をしたヤツがどうして気になるのかわからなかった。
幼馴染みのサチエは、そばにいてもいなくても俺の気に障った。
「なんでだよ。あの子、リスみたいで可愛いじゃん。鷹、おまえが怖いから誰も手を出さねえけど、彼女にしたいって思ってるヤツ結構いるんだぜ」
「可愛い?どこがだ?サチエを彼女にしたいってそんな物好きいるのか?」
わからねえな。
見てるとイライラするだけだが。
「おまえほどになると、遊び過ぎてて美意識狂ってんだろ」
手のひらをひらひらと振る悪友は呆れ顔だ。
誘われれば致したりする。据え膳食わねばなんとやらだ。男なら当然のことだろ?
「それを節操なしっつうんだよ」
それから、悪友はふと気づいたように俺の後ろを指差した。
振り返ると後ろには困ったような表情をしたサチエが立っていた。
「鷹ちゃん、あのね、ジャージ忘れちゃって……」
形のいい胸が似合う制服。短いスカートからはほっそりとした脚が覗いてた。
「そうなん?俺のでよければ貸そうか?」
「お、おい、やめとけって。鷹がっ」
話を聞いた外野がジャージを渡そうとしたのを悪友が慌てて止めた。
「貸す、だと?」
男の匂いのするもの。
「あ、いや、やっぱりやめとく、かな。ハハッ」
顔色を悪くしたヤツはそそくさと教室を出ていった。
「どうしよ、鷹ちゃん、ジャージ……」
その瞳が潤む。
机の背に掛けていたジャージを放り投げると表情がばあっと明るくなった。
「ありがとう、鷹ちゃん!」
ジャージを抱き締めると去っていく後ろ姿を見送る。その先には女友だちが待っていた。
「怖い怖い。これだから独占欲の強い男は。」
独占欲?そんなものねえよ。
あるのは切っても切れない腐れ縁だけだ。
次の授業、サボった屋上からジャージ姿のサチエを見下ろしていた。
ブカブカのジャージの裾を捲り上げ息を切らせて校庭を走っている。
「体……弱いくせに走るなよ」
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