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「体……弱いくせに」
月に一度は熱を出しては寝込んでた。
忙しい両親の代わりに俺が面倒を見ていた。
いつからだろう?
クラスメートにいじめられても俺がそばについていてやらなくてもよくなったのは。
遠い過去を思ってると、
ぐらりとよろけ、サチエが膝をついた。
その顔色は真っ青だ。
「アイツ……」
屋上から階段を駆け降りて校庭へ走ると、その人垣の中から奪うと抱き上げた。
「鷹先輩!?」
「えっ!うそっ!」
呼吸が浅く速い。白い顔が苦しげに歪む。
貧血か……
医務室に運び込むとベッドに寝かせジャージの前を寛げた。
瞬間、首からするりと掛けられてた小さな袋が落ちた。
幼い頃から下げていた御守りの中身がはみ出て見えた。
……オモチャの指輪?
その時、医務室のドアが開いた。
立ってたのはサチエのいとこ。俺の天敵だ。
僕が看るから帰っていいと、追い出そうとして俺の手にある御守りに気づいた。
「それは……」
奪うように取られた御守り。
その中身のことを知っていたのか?
天敵。
俺から平気でサチエを奪ってく。
「鷹、おまえにサチエは渡さないからな!」
それは堂々とした宣戦布告だった───
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