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元から素材はよかっただけに、少し手を加えたらあらびっくりに変身した。
それからすぐにみんなの清四郎への反応が変わった。そしてわたしへのみんなの目も。
「何あれ、清四郎くんの彼女気取りじゃないの。ウザいってわかんないの?」
「清四郎くんが可哀想よ。あんなのが幼なじみなんて」
影口なんて慣れてる。
だけどエスカレートして剃刀の刃が入っていた手紙や足を引っ掛けられたりするのは辛かった。
「朋実、その指ケガしたのか?」
「ちょっと包丁で切っちゃって」
指を隠しながら答えると清四郎は眉を寄せた。
勘の鋭い清四郎には知られたくない。それよりも清四郎の好きな人ってどんな女性?
「それもあいつらにやられたのか……」
清四郎の相手のことを考えてたら清四郎の呟きには気づかなかった。
「あのね、清四郎、……その、清四郎の好きな女性って、わたしの知ってる女性……?」
「……まあ、そうだな」
「教えてって言ったら教えてくれる?」
清四郎からの返事はなかった。
これって教えてくれないってことだよね……?
清四郎はふっと口の端を上げたら先に玄関にに向かっていった。
それからしばらくして。
わたしの机の中に手紙が入ってた。
中を開くと隣のクラスの佐藤くんからで、話があるから放課後に裏庭にきて欲しいとのことだった。
放課後、裏庭のベンチで待ってると飲み物を手にした佐藤くんが現れて、隣に座るとわたしに片方差し出した。
「ごめん、呼び出したりして。実は朋実ちゃんのこと前から気になってて僕と付き合ってもらえないかと思って」
突然の告白だった。
初めての告白に頭が真っ白に!
びっくりして慌ててコーヒーを口にして誤魔化した。
あ、れ?
急に頭がぼわーっとして眠気が……
力が入らなくなって紙コップが足元に落ちた。
「悪く思わないでね。これも彼女のためだからさ」
寄りかかった頬を撫でられて声が出ない……
暗くなってく目に最後に見えたのは、わたしの唇に触れる指だった。
……清四郎、助けて
それきり意識がなくなった───
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