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「麦野さんのせいじゃないです。・・・あなたに押し付けた奴が悪いです。」
そう僕が思いきって言うと麦野さんは、ありがとなと笑った。
「麦野さんは人間失格に出てくる葉蔵みたい。イケメンで本当は大切に想ってくれている人が近くにいるのに気が付けないところとかそっくり。」
僕がぼそっと言うと、麦野さんはきょとんとした顔をしてから盛大に笑った。
「それを褒め言葉に受け取るなら、俺は君のほうが葉蔵に近いと思うぞ。皆に嫌われたくなくて一生懸命空気読んで、笑って言葉選んで話してさ。」
僕はイケメンでもない。特に女性社員からの目は僕を汚い物を見るような目をしていつも顔を上げることはできないぐらいなのに。
「・・・死んでから得た能力でさ。ここに来る数年前までの状況なり、君の人間関係はバッチリ知ることができるのがあって・・・勝手に調べたみたいになっちゃって申し訳ないけどもう全部分かってるんだ。それを踏まえて言わせて。まず君にあまり干渉しないご両親だけどいつだって君の事を心配している。言葉にしないだけで。そして君の小学生の時からの幼馴染君・・・たしか杉田君。いつも実は君と同じ時間の電車を使っていて君の暗い顔を見てすごく心配している。・・・君は一人じゃないんだ。」
「・・・でも、それでも。」
死にたい。誰に心配されたって僕は今の状況が変わるとかないんだから。
「だったら俺はずっとずっと君が生きたい!と思うまでこの雨は止ませないよ。どれだけ口からの言葉でも俺は人の心の奥の言葉まで分かるからね。嘘ついても無駄だ。」
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