綺麗に晴れた日に死にたい

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「・・・ここで今、手首切って死ぬことだってできるよ、そんなことするぐらいなら。」 このずっと続く雨の原因は麦野さんだったのか。最初はここで自殺して人でなくなったと言われても信じられなかったけど、今なら信じられる。この旅館の客は僕しか自殺したいと思う人が現れなかったからこんな状態なのだろうし、滞在を伸ばすことは生きることだから、だから喜んでいたのだろうし。次々と僕の心を読むのを見せられたら信じるしかない。だから今言った僕の口から出た小さな嘘はとっくに見抜かれているはずだ。」 「君はこの旅館で死ぬことはできない。たとえ、自殺願望者じゃない人間にとって俺は見えない存在だとしても俺に死体を見せることは君にはできないはずだ。・・・君は本当は死んだ後のことまで考えてしまえる優しすぎる人だからね。」
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