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その山奥に着くころにはもう夜だった。満点な夜空の下、僕は一泊だけ予約した旅館に向かう。そして温かい料理と温泉を心行くまで楽しんだ。
「明日、死ねるんだ。」
死ぬことに、ここまで心浮かれる奴なんて僕しかいないかもしれない。
もうこの世の中にお別れできる。
それだけで僕は小さく歌うくらい浮かれていた。
明日の天気は晴れだと天気予報で言っていた。
しかし、次の日、土砂降りの雨だった。なんなら台風かと思うくらい風も吹き荒れている。この旅館を一歩出たらぐしょ濡れになるだろう。天気予報を見ると今日一日この天気らしい。昨日の予報と大きく違うではないか。
「・・・まあ、いいか。金ならあるし。」
貯金は全て降ろした。だから旅館にもう一泊泊めれるように頼むと、快く受け入れてくれた。この旅館は料理も温泉も素晴らしいのにお客は僕だけだったみたいで、むしろ歓迎された。
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