綺麗に晴れた日に死にたい

6/12
前へ
/12ページ
次へ
一人でイライラしてじっと睨むように窓の外の雨空を見ていると僕の背後からいきなり声を掛けられた。 「そんな怖い顔をして外を見てどうしたんだい?」 パッと振り返ると、端正な顔を持つここの旅館の経営者兼料理長の麦野さんがニコニコしながらいつの間にかいた。・・・ついさっきまではいなかったのに。僕が驚き固まると、 「アハハ!!!なかなかいい反応をするじゃないか。俺、今から仕事もひと段落したし、温泉に浸かろうと思うんだ。よかったら君もどうだい?」 バシバシと強く背中を叩き、僕のイエス、ノー聞かずに温泉のほうに連れて行く。僕は目を白黒させながら麦野さんをじっと見た。 「お、俺に惚れたか?」 「違います!!」 からかい区長でニヤッと口角を上げて言う麦野さんに僕は反射的に言葉を返す。強引で話を聞かない人だな・・・。そんな人、世の中には沢山いる。だけど、不思議と嫌じゃなくなんだが癒しすら感じてしまった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加