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「いい湯だよね。」
・・・結局僕は押し切られるように温泉に現在、麦野さんと浸かっている。
「ですね。」
いい湯なのは事実なので短く肯定すると麦野さんは太陽のようににっこり笑った。
「室内の大浴場もいいけどさ、晴れたときの露天風呂に浸かると本当に最高の気分なんだ。」
「・・・でしょうね。」
そりゃそうだ。いい景色を見ながら入る温泉なんて極楽そのものだろう。でも僕はきっと晴れた時にはここにはいないだろうけど。
「・・・まだ、死にたい?」
「え。」
しばらく世間話をしていたらいきなり麦野さんに聞かれた。僕の心臓が止まるかと思った。いや、ここで止まったら駄目だ。ここで死ぬのは美しくない。温泉に入って死ぬとか、この旅館の人に迷惑かけるだけだ。そんなことしたくない。死ぬなら美しい場所でひっそりと、だ。
・・・っていうか、いやいや。
なんでこの人、僕が死にたいと思っていること知っているの?
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