それから。

20/21
2544人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
「・・・今日、泊まりに行こうかな。」 私がポツリと呟くと、彼はうれしそうに目を輝かせる。 「えっ!?マジで!?」 その瞬間、エレベーターが3階で止まった。 ドアが開くと、外科の先生たちがぞろぞろと中に乗り込んでくる。 顔見知りの先生がいたらしい佐藤くんは、一瞬でぱっと姿勢を正し、「おつかれさまです」と真面目な顔であいさつをした。 (ふふ、さすが営業マン!) 変わり身具合がかわいくて、私は小さく笑ってしまう。 そんな私に視線を向けると、彼はバツの悪そうな顔をした。 かっこよくてかわいくて、なによりとってもやさしくて。 私はこの人が、心から愛しくてたまらない。 先生たちに押されるように、壁際に寄り添っている私たち。 誰にも気づかれないように、私は彼の指先に触れた。 一瞬ピクリと動いた彼の指は、応えるようにすぐに私をつかまえる。 指先だけでも。 彼を感じると、私のココロはあっという間に満たされる。 1階に着き、先生たちが降りるのを見届けると、私たちは一緒にエレベーターの外に出た。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!