失恋

10/25

2559人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
(仕事終わってからも西村先生に会うとか、絶対にイヤなんだけど・・・。) 欠席したいけれど、気分が乗らないという理由でドタキャンできるほど、怖いもの知らずな若さもなければ、許されるほどに偉くもない。 ため息をついて私は言う。 「うん・・・。行く予定。」 「そうですか。じゃあ、とりあえず飲んで気分転換してください。 解決はできないかもしれないですけど、愚痴ならいつでも聞きますよ。」 「・・・ありがと。」 さわやかな笑顔で言われれば、そう答えることしかできなくて。 「じゃあ、また夜に。失礼します。」 私にお辞儀をすると、佐藤くんはそのまま、先生たちのいる医局の方へと向かっていった。 (はあ・・・。憂鬱だな。) その後は、重い気持ちでなんとか仕事に取り組んだ。 なるべく西村先生との接触を避けて、動揺しないように気をつけてはいたけれど、私はもう、そんなこんなでかなりいっぱいいっぱいの精神状態。 幸いミスはしなかったものの、終業時には抜け殻のようになっていた。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2559人が本棚に入れています
本棚に追加