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周囲にひと気がなくなってから、私は彼に声をかける。
「じゃあ、私こっちだから。」
そう言って、私は右手で南をさした。
「はい、おつかれさまです。」
佐藤くんは礼儀正しく挨拶してから、私の耳元に唇を寄せる。
「じゃあ、夜、待ってるから。」
「!!」
少しだけ、耳にやわらかな感触がした。
ダメだと言わなきゃ、そう思うのに、私の唇は動かない。
家に行く約束も、言い出したのは私なのに。
彼が口にすると、それはどこまでも特別に聞こえる。
胸の中に、ふわりと艶やかな花が開いた。
香り立つように、甘い時間に誘われる。
「わかった?」
「・・・うん!」
見つめられ、もう一度囁かれた問いかけに、私は笑顔でうなづいた。
END
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「恋するリスク」をお読みいただき、どうもありがとうございました!!
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