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「新曲も作られているということで、これからの活躍がますます楽しみですね。ねぇ、李々香ちゃん」
李々香は移動していく柊露の後ろ姿を見つめている。新里に話を振られたことにも気付かない。
「──李々香ちゃん?」
「あ、はい。楽しみですね」
ようやく我に返って気の抜けたコメントを残す。
「準備できましたか? はい、それでは、Nookの皆さんで『銃声』です」
イントロが始まり、頭の二小節だけ『銃声』が奏でられたが、1拍の休止を挟んで唐突に別な曲に変わった。
真朱の完璧な8ビートに、桔梗のグルービーなベースライン。最強のリズム隊に紫苑の艶かしいギターリフが絡み付く。
柊露の歌が入ってくるが歌詞は当然テロップとは全く違う。
『悪いやつらの話をしよう
そう 為政者の仮面を被ったあいつらだ
用心しろよ しおらしい笑顔で近付いてくる』
柊露は体をくねらせてカメラから逃げるように動き回った。
『傲慢な偽善者たちが 欺瞞を自慢する
幸せを祈りながら 銃を突き付ける
神妙な顔で 嘘を吐く者が珍重される
遺恨を抱いて隠れているやつらを炙り出せ 』
柊露は奥で座っている出演者の所まで走り寄り、李々香の腕を取ってカメラの前に引っ張りだした。李々香の腰は引けているが表情は楽しげだ。
踊るように李々香を振り回しながらサビに突入する。
『ロックンロールを殺したのは誰だ?
引っ込め お前らじゃない
クロスロードで契約したのは誰だ?
契ったのは悪魔なのか?』
柊露は断罪するように叫んだ。
誰が何の罪で裁かれるのか?
カメラを睨み付け、柊露は中指を立てる。
『バカ野郎共の
チンケな夢が舞い降りる
勘の悪い大人たち
ミサよりもミサイルが好きな連中さ
どうすりゃいい オリビアに聞かなくちゃ』
柊露は李々香の腰に手を回し、抱き寄せた。李々香は抗いもせず、柊露にしなだれかかる。
『ロックンロールを殺したのは誰だ?
引っ込め お前らじゃない
クロスロードで契約したのは誰だ?
契ったのは悪魔じゃない』
演奏が終わった。まばらな拍手。
「いやー、迫力のある演奏でしたねえ。え? コマーシャル? ああ、そう。コマーシャルに行くのね。それでは一旦CMです」
ジングルが流れてCMに切り替わる。スタジオ内はスタッフが一斉にざわめき出した。
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