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『今、われわれを召集するラッパが再び鳴っている。それは、武器は必要ではあるが、武器を取れとの合図ではない。われわれは闘争の中にあるが、戦闘に参加せよとの呼びかけでもない。それは、年々歳々、「希望に胸躍らせ、苦難に耐えて」長いたそがれの闘いの重荷を引き受けよ、との呼びかけである。その闘争は、人類の共通の敵である圧政、貧困、疾病、そして戦争そのものに対する闘いである』[1]
「ここでケネディは圧政、貧困、疾病、戦争を人類の共通の敵だと言っている。ひとまず疾病は置いておくが、圧政も貧困も戦争も作り出すのは人間だ。いいかい? 自然発生的に生じるのではなく、人間がそれらを生み出しているんだ──そのことを念頭に置いて、次にこれを読んで欲しい。1961年4月27日、ニューヨークのウォルドルフ=アストリア・ホテルで開催された米国新聞社協会の広告事務局の年次夕食会での演説、『大統領と報道機関』での一節だ。原文と日本語訳を併記してある。分かりにくい箇所は意訳してあるが、曲解はしていないつもりだ」
伊師崎はスマホの画面を切り替えた。
今日、いかなる戦争も布告されていない──そして、闘争がどれほど激しかったとしても、伝統的な方法で布告されることは、もうないかもしれない。私達の生活様式は攻撃を受けている。自らを私達の敵だと位置付けている人々は、地球上でその活動範囲を広げている。私達の友人の生存は危険にさらされている。それでも、戦争は布告されておらず、行進軍が国境を越えることはなく、ミサイルが発射されたりすることもない。
Today no war has been declared--and however fierce the struggle may be, it may never be declared in the traditional fashion. Our way of life is under attack. Those who make themselves our enemy are advancing around the globe. The survival of our friends is in danger. And yet no war has been declared, no borders have been crossed by marching troops, no missiles have been fired.
もしマスコミが、戦況の自己統制を自らに強いる前には、きっと宣戦布告がなされるはずだと待ちかまえているのなら、私が言えるのは「我々の安全に対するこれほど大きな脅威だと認められた戦争はかつて無かった」ということだけである。もしあなたが「明白かつ現在の危険」の事実認定を待っているなら、私が言えるのは「危険がこれまで以上に明白であり、その存在はこれまで以上に目前に迫っている」ということだけである。
If the press is awaiting a declaration of war before it imposes the self-discipline of combat conditions, then I can only say that no war ever posed a greater threat to our security. If you are awaiting a finding of "clear and present danger," then I can only say that the danger has never been more clear and its presence has never been more imminent.
今や政府による、人民による、全てのビジネスマンや労働者のリーダーによる、そして全ての新聞による、展望の変化、戦術の変化、任務の変化が求められている。何故なら私達は、一枚岩的で冷酷な陰謀に世界中で反乱に逢っているからだ。陰謀は自らの勢力圏を拡大するために概して水面下の手段──侵略ではなく潜入、選挙ではなく転覆、自由選択ではなく脅迫、昼の軍隊ではなく夜のゲリラ──に頼っている。これは、莫大な量の人的・物質的資源が徴収された、軍事的、外交的、諜報的、経済的、科学的、そして政治的なオペレーションを結合させた、緊密に編まれ、高度に効率化された機械の構築に投入する一つのシステムだ。
It requires a change in outlook, a change in tactics, a change in missions--by the government, by the people, by every businessman or labor leader, and by every newspaper. For we are opposed around the world by a monolithic and ruthless conspiracy that relies primarily on covert means for expanding its sphere of influence--on infiltration instead of invasion, on subversion instead of elections, on intimidation instead of free choice, on guerrillas by night instead of armies by day. It is a system which has conscripted vast human and material resources into the building of a tightly knit, highly efficient machine that combines military, diplomatic, intelligence, economic, scientific and political operations.[2]
全てを読み終えて純人は目を閉じる。
汗をかいた腋の下が、冷房ですっかり冷やされていた。
[1]国務省出版物 大統領就任演説
https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/2372/
[2]JFKライブラリ
https://www.jfklibrary.org/archives/other-resources/john-f-kennedy-speeches/american-newspaper-publishers-association-19610427
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