ふざけんな!

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「くっくっくっ」 「てめぇ!今すぐそれを消せ!」 ジャックの手にあるスマホを取ろうとジャックに飛びかかる。 ジャックは楽しそうに笑い、無駄に長い手を上にあげて届かないようにする。 運転しているので、視界を塞ぐのはいけないし、くすぐるのもダメ、スマホをたたき落としたいが落としてしまい金を払えなんて言われたらバイトを増やさなければならないことが確定。 どれも嫌なので、大人しく舌打ちを1つこぼして助手席に座り直す。 「彼女は?」 「は?」 脈略のない言葉にイラつきながら返すと、ジャックが画面が消えてしまっているスマホを手に振る。 「チッ」 「リリーちゃんか?」 「気になるなら連絡先消す前に会話内容見とけば良かっただろ」 「シラフのやつに聞くのが面白いんだろ?」 「悪趣味」 「なんとでも」 楽しそうに笑うジャックに眉をひそめながら、俺は通信アプリをたちあげる。 はぁ、あるわけねぇか。 案の定リリーの連絡先は消され、下にスライドしていくと何件か消されている人がいる。 消されていたので話していたのはほとんどいねぇからいいけど。 「で?彼女は?」 「いねぇよ」 「へー、じゃあ、彼氏は?」 「はぁ?ふざけんな、いるわけねぇだろ」 「朝グレンって言ってただろ?」 そう言われて、膝に置いていた肘がずるりと滑る。 「は?起きてたのか?」 ニヤニヤとしたまま答えないジャックに舌打ちをこぼし、ため息をついて答える。 「グレンはただの友達だ。」 「随分素直だな」 「もう諦めた。」 「いい子だ」 動画のようにジャックが俺の頭を撫でるのでそれを叩き落とす。 少しぐらい怒れば俺の腹の虫も収まるのに、終始楽しそうに笑うジャックのせいで、俺の腹の虫はチクチクと嫌なところを刺してくる。 「名前は?」 「は?」 次こそ驚きすぎでジャックの顔を見る。 バカにしているのではなく、本当に知らないのか首を傾げてこちらを見てくる。 「はぁ、普通強姦するなら名前ぐらい知ってるもんじゃねーの?」 「途中から良がってたから和姦だろ。」 「覚えてねぇよ」 「だろうな」 飄々と言ってのけるジャックを横目で見るが、反省している様子も無ければ、申し訳なく思っている様子もない。 「お前、俺が訴えたらどーする気だよ」 「ん?訴えないだろ?」 「はぁ?わかんねぇだろ」 「まぁ、訴えてもいいけど、残念ながらこの動画にちゃんと入れていいか聞いた動画があるからな。」 「嘘だろ。」 「本当だ。まぁ、訴えられたら訴えられたで金を使って解決だな」 「クズが」 肩をくすめるだけで答えるジャックを無視して外の景色を見る。 「それで?名前は?」 「黙秘権」 「なし」 「秘密主義」 「もう秘密を共有した仲だろ?」 そう言ってスマホを振る。 あぁ、そうだな。俺すら知らない秘密だよ。 「はぁ、勝平 功祐(かちひら こうすけ)」 「ふーん、よろしくな、功祐」 「無理。」 ジャックは片眉をあげるとチュッとスマホ画面にキスを落とす。 キザな行動に、鳥肌と共に舌打ちを零すとジャックは楽しそうに笑う。 「そんな嫌うなよ」 「酔っ払いを強姦するようなやつを好きになるわけねぇだろ」 「和姦」 「強姦だ」 ジャックはくすくすと笑うと、アクセルをさらに踏み込みスピードをあげる。 素早く流れていく景色は、もう既に見たことある景色に変わっている。 「あと10分」 「5分だ」 はぁ、とため息をつくと、ジャックはまたくすくすと笑う。 何が楽しいか分からないが、人生が楽しそうで羨ましいことだ。 俺の家がある住宅街に入っていく。 廃れた家が目立つ住宅街で、この高級車が面白いほど似合わない。 「どれだ?」 「あぁ、あれ白いの」 「二階建て.....」 「.....あ?喧嘩売ってんなら買うぞ?」 そう言うと、ジャックはまた楽しそうに笑う。 てか、二階建てとかこの住宅街入った時に結構並んでただろうが。 わざとか本気か分からないジャックの冗談を鼻で笑う。 俺の家の前に車が止まる。 車から降りると、グッと背伸びをする。 未だに腰が痛いのがムカつく。 「3日後夜8時に迎えに来る。ここで待ってろ」 「は?嫌に決まってんだろ」 「明日、明後日は用事があるからな。我慢しろ」 「いや、そーゆー事じゃねぇ 誰がお前らと二度と会うかって言ってんだよ」 ジャックが眉を上げる。 「そのシャツ200ドル」 「あ?お前が俺のパーカー濡らしたんだろ」 「あぁ、それだ、パーカーを取りに来い」 「要らねぇ」 「じゃあ3日後な」 スマホを掲げてそう言うと、車はそのまま走り出した。 なんで強姦されたやつがまた会うと思ってんだよ。 別にばらまかれた所で痛くも痒くもない動画で脅されてもな。 「はぁ、馬鹿か俺は」 首を振って道から視線を外す。くたびれた木の階段をのぼり、ギシギシと音が鳴るの気にせずに扉に手をかける。 さっさと家に帰ろう。 スマホに付いている鍵で家の扉を開け、2日ぶりの家に着く。
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