ふざけんな!

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そのチケットにはド派手になんちゃらバスケット大会みたいに書いてあり、下の方に決勝戦と書いてある。 「決勝戦の観戦チケット?」 「そう!」 「俺、バスケ興味ねぇ」 「あはっ、そんなことを言わないでさー!いこーよ〜、決勝戦は明日だからケニーも誘ってさー」 おねがぁぁいーーー!と言って俺の体を揺さぶるグレンの顎を上に押し上げる。 酔う! 「あーも!うるせぇなぁ!そのチケットと昼飯なんの関係があるんだよ!」 そうなのだ!俺は昼飯を奢れと言ったはずなのに、なんでバスケの観戦が出てくるんだ。俺は、バスケに一切の興味も無ければ、やったこともルールも知らん! 「ほらほら、ここをよーく見て!」 「あ?」 グレンがチケットの小さく書かれた文字のところを押し付けるように見せるので、適切な距離にまで離してそこの文字を見る。 そして、そこにはこんな文字が書いてある。 「出店での食事は.....6割引!?!?」 驚くほどの割引に、嘘!?!?と何度も目を通すが、何度見ても間違えでは無い。 どう見ても6割引の文字。グレンの手からチケットを取り、天に掲げるように上に持ち上げる。 「グレン。」 「なーに?」 くすくすと笑い声が聞こえる。もうこの際無視だ無視。てか、グレン以外の周りからの目線も感じるが、ケニーとグレンが揃えば美形の集まりで嫌でも注目を集めるので気にしない。 「さすがだ親友」 「やったねベイベイ」 ガシッ!と肩を組合い、交渉が成立したことが決定する。 観戦チケットの裏には、名前を書く欄があるので、授業開始の合図と共に2人並んで座り、観戦チケットの裏に名前を書き込む。 グレンは裏にグレン・ルイス・ライナーと書き込み、俺は勝平 功祐と英語で書いてしまう。 しかもよく読むと、3日間行われる大会で、明日の決勝トーナメントの時は、この決勝戦観戦チケットを持っている人は無料でポップコーン、飲み物とかの観戦中の食べ物は無料らしい。 なんて至り尽くせなんだ。 「グレン、なんでこんなチケット持ってんだ?」 関係者用と書かれたチケットに、ふつーに疑問が浮かんでくる。 「あぁ、関係者ってやつ?」 講義を聴きながら、グレンはにひひっと笑う。 「あぁ」 グレンは別にバスケをしている訳では無い。親も普通の一般家庭の親で、ただ両親ともギャンブルが大好きだということを引けば、とても良くしてくれる良い両親だ。 俺がよく遊びに行っても快く迎え入れてくれるし、むしろもっと太りなさいと食事を大量に出してくれる。 いや、リアルにアメリカの食事は太りすぎるからやばい。しかも俺もう成長期終わってる。 グレンの両親から、そんなんじゃ大きくならないわよ!と言われるが20はもう成長期はない。 「ん〜、それねー、俺ってバスケめっちゃ好きじゃん?」 「へ〜」 「あはっ、知らなかったの?」 「初耳」 少しは俺に興味もって〜と笑うグレンに、俺は肩をくすめるだけで答える。 てか、お前からバスケの話なんて聞いたことねーよ。今日初めてお前とバスケの話したわと思いながら手に持ったチケットを眺める。 「だからね〜、今の彼女さんが大会のDJと仲良いらしくて、だから付き合った。」 「.....チケットのために?」 「うん、そーだよー?」 一昨日一緒に寝て、俺を助けに来なかった理由の彼女が、このチケットを貰うために付き合った彼女だと知り俺は頭を抱える。 そんぐらいのレベルの彼女なら俺を助けに来てくれてもいいんじゃね?と思ったが、口には出さない。 てか、バスケの大会にDJ来んのか、そうか、アメリカのバスケはド派手だな、軽い現実逃避をしながらため息をつく。 「で、この大会昨日から始まってんだけど」 「うん、本当は昨日チケット貰ってたんだけど、功祐もケニーも来ないし、予選だからいっか、俺の好きなチーム出ないしいっか、と思って行かなかった。」 「彼女と行くとかいう選択肢なかったわけ?」 「え〜?なんでアイツと?一緒に行っても楽しくないじゃん。」 「.....そうか、」 「うん!」 満面の笑みで大きく頷くグレン。俺はどこで教育を間違えたのだろうか。お前グズだな、っという言葉を飲み込んで、そうかと答えられた俺は偉い。 グレンは楽しいそうに笑いながら、楽しみだな〜、なん食べよっか〜、とニコニコとしながら講義のノートを取っている。 「お前、夜の道には気をつけろよ」 「あはっ、ケニーみたいにアホじゃないから大丈夫だよ〜」 あぁ、あいつ刺されかけた事あったな。しかも、俺たち3人で歩いてる時に後ろから。 グレンは爆笑するし、ケニーは相手の女覚えてないし、むしろ俺が相手の女覚えていたという意味のわからない三角関係が出来たよな。 1年前ほどのことを思い出しながら、講義をしている黒板を眺める。 先生の書いている文字が小さすぎて読めない。まぁ、ここの話別にいらないところだがいいけどさ。 「功祐もこれで講義終わりだよね?」 「あぁ」 「じゃあ、これ終わったら昼飯食べに大会見に行こ〜」 明日の決勝戦のために俺の好きなチームのユニ買いたいし。というグレン首を傾げる。 「決勝戦のチーム決まってないんだろ?」 「ん?当たり前じゃん、トーナメント方式なんだがら」 「ん?ならなんでわざわざ決勝のためにユニ買うんだ?」 普通、決勝戦に出場するチームが決まった後、その出場するチームで好きな方のユニを買うものではないのだろうか?てか、俺だったらそーする。 「え〜!功祐知らないの!?」 「何を?」 「全米のストリートバスケ王者ファフニールとこの州の王者シグムンドだよ!」 全く聞いたことも無い名前に、首を傾げるとグレンはありえない!と言う顔をする。 いや、だってアメリカに比べて日本はバスケがそんなに国民的スポーツでは無いし、部活とかはあるが、そんなにプロの試合とかそこら辺で見るものじゃない。 故に、俺は別にバスケのことは好きでもなければ嫌いでもない。てか、よく知らない。 だから、別にアメリカで有名なチームを知らなくても無理はないと思う。うん、そう思う。 「ファフニールはマジで強い。PG、司令塔の人がとりあえずゲームメイクが上手くて、それについていける身体能力を持った人を、アメリカ中を回って探したらしいよ!」 えぇ、ストリートバスケってそんなすげーの?そんなに壮大なの?なんて思いながらグレンの言葉に口を挟まずに聞く。 こんなとこで口を挟んだら怒られそうだ。怒られるのは勘弁だ。 「そして俺の応援しているシグムンド!!!ここら辺の州では負け無し!連戦連勝で今勢いに乗っているチーム! そして!ずっとストリートバスケ会でファフニールとシグムンドどっちが強いかってなっててたんだよ!」 「お、おう」 熱弁を語るグレンの気迫に押され、とりあえず頷く。 「そして!ようやく夢の対決が現実したんだよ!」 「ん?なんで今まで対決が実現しなかったんだ?」 別に直ぐに対決しても良かったんじゃないのか? 「まぁ、簡単に言えば、ファフニールチームが全米のどこにも本拠地を構えてないせいで、いつどこにいるかわかんないんだよ。」 「本拠地が、ない?」 「そうそう、全米で人気があるから別に特定の地域に応援してもらう必要がないんだよ。」 「それは凄いな。」 「そう、しかもファフニールの司令塔はNBAとの契約が決まってるせいでめちゃくちゃ忙しい。」 「それは、凄い」 バスケを知らない俺でもNBAの凄さは知っている。しかも、それがどれだけ難関なのかも。 そんなチームの試合がこんな所で行われることに驚く。 「だろ!て、ことで行くぞ!」 講義もあと数分で終わりだ。待ちきれないとばかりにグレンはワクワクした様子でもう教科書類を片付け始めた。 早いわ。
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