ふざけんな!

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『おいおいおいおい!!会場の盛り上がりがこんなもんじゃ選手入場は宣言できねぇぜぇ!!!』 室内コートの中心に立ってマイクで会場に呼びかけているDJの声に応えるように会場は更なる盛り上がりを見せる。 「「イェーイー!!!」」 DJの呼び掛けに生き生きと答えている横の人物、グレンとケニーはシグムンドのユニフォームを着てはしゃいでいる。 ちなみに俺はジャックのユニフォームを着た。てか、2人に着せられた。 そもそも俺は今日来る気は無かったんだ!ジャックがいると分かった時点で行くつもりなかったのにこいつらから引っ張って連れてこられた。 あ?ユニフォームもブカブカに決まってんだろ言わせんな! 関係者席のせいで、最前列にならんでいる俺は頭を抱える。 ジャックのユニフォームを着ていることにも屈辱を感じるし、まず第一にジャックのチームが決勝にいることがムカつく。 昨日はどうせ決勝戦には居ないだろうとタカをくくっていたら、グレンが、それファフニールのユニフォーム!しかもレプリカじゃない!とか抜かしやがった。 絶てぇ行きたくねぇと思ってファフニールとやらの負けを祈ったが、ファフニールは無事決勝に進出。ファンの予想通りファフニールとシグムンドの決勝戦となった。 『そんじゃあ、準備はいいかぁぁー!?!?』 DJがより一層大きな声をあげると、観客はそれに応えるように大声を上げ、様々な楽器が音を鳴らす。 『じゃあまず入場するのはこいつらだ!! 我らがヒーロー! シィィィィグムンドぉぉぉぉ!!!』 うおぉぉぉぉぉ!!!! 思わず耳を抑えるほどの大歓声かひびき、右側の入口から高身長の男たちがその声に応えるように手を挙げて出てくる。 コートの上に設置されている四方を向いている4つのテレビにも入場してきた選手が映っている。 うっわ。 筋肉隆々で、アメリカ人の中でも飛び抜けた身長の男たちが13人歩いて入場してきている。 迫力がすごいにも程があるし、アップをしているのか、軽くボールをついている。 DJも興奮したように喋っており、グレンとケニーも俺の両脇で叫んでいる。うるさい。 『さぁさぁ!!! その我らがヒーローに対するのは!!! アメリカの王者、アメリカの英雄!!! ファァァァフニールゥゥゥウ!!!!!』 ウオゥゥゥゥアウ!!!! 大歓声が響き、左側から10人程が入場してくる。テレビには見覚えのある、会いたくないやつの顔がドアップで映り、女性陣の甘い歓声がより一層強くなる。 ちなみに、ケニーとグレンはブーイングを全力でしている。そし、そのままやったれ! 『おいおいおいおい!グレイ!! そんなに欠伸して昨日はお楽しみだったのかァ?余裕だなぁ!!』 DJの言葉に、大きな欠伸をしていたグレイの姿がドアップで映され、ブーイングがさらに強くなる。完全なアウェイ感である。 しかし、グレイは気にした様子もなくジャックの後ろを歩きながらキョロキョロと辺りを見渡している。 .....帰りてぇ。 頭を抱えて下を向いていると、ファフニールとシグムンドのキャプテンが挨拶しているのか、なんかDJが盛り上がるような言葉をかけている。 いや、それよりもさ、うん、それよりも、なんでこっちファフニールチームサイドなんだよ!!! グレン曰く、いや〜、シグムンドのほう人気過ぎて無理だったらしい!でも、ファフニール側でも1番前ならいっか!ってなった〜、だとよ!!! 何一つ良くねぇ。 「おい功祐!始まんぞ!」 ケニーが俺の背中をばしばしと叩きながら前を見ろと言ってくるので、渋々前を向くと、ゲームを始める合図がなる。 合図とともに、中心にいたシグムンドの人と、グレイが高く飛んでボールを取り合う。 とったのはシグムンドの方で、早々にシグムンドが2点入れてしまう。 大きな掲示板に、シグムンドの点数が加算され、会場は盛り上がりを見せる。 ファフニールのチームから、俺が知っている人で出ているのは、あの、ナンパしに行って帰って来なかったやつと、グレイだ。ジャックともう1人のやつはベンチに座っている。 頼むからこっち見んなよっとジャックに願いながら、試合を見つめる。 一クォーター目なのに、ファフニールとシグムンドは、シグムンドが圧倒しどんどん点数が離れていっている。 シグムンドのファンは異常なほど盛り上がっている。 ん?そういえばファフニールのチームからのブーイングは聞こえねぇ。普通こういった場面で自身の応援するチームが負けていたらブーイングがたつはずなのに。 疑問符を浮かべながらグレンに聞くと、グレンは苦笑しながら教えてくれた。 「ファフニールの司令塔であるジャックは性格が悪い事で有名だからね たぶんこの一クォーター目はシグムンドへのハンデとして好きなだけ点数を稼がせる気なんだよ〜。 」 そう言われて試合をみると、グレンの言う通りファフニールはあまり負けているというのに焦りもなければ真面目にやっている感はそんなにない。 点数差は歴然。23対8と、だいぶ大きな差が開いてしまっている。 ふーん、あいつの性格の悪さはスポーツでも発揮されんのかよ。と思いジャックを見て、次にだるそうに動いているグレイを見る。 ........あ〜。目が、あった気がする。 パチッと、しっかりとグレイと目が合い、なんか笑われた気がする。しかし、それのおかげでグレイはシグムンドの1人にボールを取られた。ざまーみろ。 ブー!!!! ブザーがなり、一クォーター目が終了する。 シグムンドの圧倒的な点数差のリードのまま終わる。普通の試合ならほぼ負けが決まっているようなものでこの試合でなければ帰るらしいが、今回はファフニールが負けているので、最後までみるという観客が多く、全く席を立つ人はいない。 「あー、こんだけしか離れなかったか」 「ん〜シグムンドも少し焦ってるみたいだね〜」 ケニーとグレンの言葉に首をかしげ、2人を見ると、あーあ、と残念がる顔をしている。 「勝ってんのに?シグムンドがなんで焦ってんの?」 「ん〜、簡単に言えば、ファフニールのこの作戦はよく見るヤツなんだよ。たぶんシグムンドが相手だから二クォーター目からはフルメンバーで来るだろうから、フルメンバーを2人しか入れてなかった一クォーター目でもっと点数を離したかっただろうね。」 そうゆうものなのか、と頷きながらコートをみると、2分間の休憩がもうすぐで終わる。 シグムンドは監督?みたいなおっさんを中心として円になって作戦を立てており、ファフニールはそれぞれがバラバラにベンチに座っている。 いや、差が酷い。 しかし、ファフニールはグレンが言った通りメンバーチェンジするのか、ジャックともう1人のやつが上着を脱いでいる。あと、さっき出ていた1人はまだ選手交代しないのか、ジャックと話している。 「二クォーターからフルメンバーじゃないってことは、三クォーターでフルメンバーなのかな?」 「あーでも、レニーはたしか少し前に怪我してなかったっけ?」 「あー、そんな噂流れたね〜。本当なのかな?」 「さぁ?」 ちなみに、レニーはファフニールのレギュラーの1人で、この間酒を飲んだ4人に比べると少し劣るらしいが、他のチームなら優遇されるような選手らしい。=すごい人。 ちなみに、この知識はグレンとケニーに昨日の夜詰め込まされた。要らねぇ。 「あ、始まる。」 グレンの言葉で前を向くと、選手達がコート内に続々と入っていってる。 ジャックも話が終わったのか、一クォーター目でもいた選手の背中を押してコート内に入れている。 ん? もう他のメンバーはほぼ配置についていると言うのに、配置につこうとしたジャックにグレイが肩を叩く。 嫌な、予感が..... っ!!! グレイがこちらを指さし、ジャックが俺の方をむく。一瞬だけ驚いた顔をすると、直ぐにジャックは目を細めて笑った。 あいつ! グレイが配置につくと同時にブザーが鳴り、二クォーター目が始まる。 あのクソ野郎!!! ギリッと歯を噛んでグレイを内心で貶す。今から立って外に出ようにも、盛り上がっている人の前を通るのは避けたい。 しかも、ケニーとグレンが俺の肩に手を回しているので、立ち上がろうにも立ち上がれない。 あぁ!早く終われ!!!
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