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20分の休憩が終わり、入場してきた選手をDJが盛り上げながら歓迎するが、赤くなったジャックの顔を見てさらに騒ぎ立てる。
『おいおいジャック!それどうした!?』
「振られたんだってよ!」
ガハッハッハッと笑いながらDJに答えるグレイに、ジャックのエルボーが決まる。
DJはDJで、こんなイケメンの誘いを断る女はどんなやつなんだ!?と騒ぎ立てている。そのせいで会場は大騒ぎだ。
もちろん俺は頭を抱えていた。
しばらくして始まった三クォーター目。ここでファフニールは逆転し、完全にファフニールの流れに乗せられたシグムンドは翻弄されまくりだ。
そして、四クォーターと続き、四クォーター目はなかなかのいい試合を見せていたと思ったが、グレンからすればバカにされているとこことだ。
「全く相手にされてない。司令塔のジャックなんてほとんど汗もかいてない。」
そう言われてジャックをみると、たしかにスポーツをしているとは思えないほどしか汗をかいてない。
四クォーター目は、素人から見るといい試合を、かじっている人からみるとバカにされた試合をして、結果ファフニールの勝利で終わった。
終わると勝者へのインタビューが始まるが、グレンはさっさと立ち上がる。
ケニーは別段応援しているチームはなく、バスケが好きだから見に来たのであって、どちらが勝者でも構わないらしい。シグムンドを応援していたのはグレンが応援しているからとのこと。だから、ケニーは最後まで聞く、と言って席を立たず、グレンは車を回してくると言って席を立った。
「あ、俺別の車で帰る。」
そう言うと、少し離れていたはずのグレンが止まり、ケニーもインタビューを受けているファフニールから目線を外してこっちを見た。
「え〜?なんで!?なんで!?」
「お前、野宿する気か?」
本気で言っているケニーを一発殴り、ガタガタと揺らそうとしてくるグレンを止める。
「あーもう!うるせぇ!友達と会ったからそいつと帰るんだよ!!」
そう言うとグレンとケニーが固まり、2人で顔を見合う。そして、同時に口を開く。
「功祐、お前俺たち以外に友達いたのか!?」
全力で殴った。
————————————————————
グレンとケニーと別れて、さっきの場所でタバコを吸う。
日に2本とか、吸っていた時以来でどんだけイライラしてんだよ、と思うが吸ってしまったものは仕方ない。
はぁ、とため息を着くと、それと共にタバコの煙が空中に吐き出される。ぷかぷかと浮かぶ久々に見るそれに、日本にいる友達を思い出すが直ぐに頭を振って思考の端に追いやる。
「あ、いたいた」
「あ?」
ジャックでもグレイでもグレンでもケニーでもない声に、上を向いていた視線をそっちにやると、あのBARでの2人がいた。
えーと、たしか名前は、
「マンディ・アヤラ・アフラロと、サージ・ミーシャ・コーウェンス。」
ちなみに、マンディが俺と飲んだ方で、サージがナンパから帰ってこなかった方だ。
「おっ、知ってるんだ」
「あー、有名人?だから?」
マンディの言葉にそう返すと、ぶはっ!と2人して吹き出す。
んな面白いこと言ってねぇよ。
「ははっ、それなら初めて会った時に知っていて欲しかったな。」
「悪かったな。」
バスケの事とか知らねぇし、と言う言葉を飲み込んでタバコの火を消す。
「もういいのか?」
サージの言葉に頷きながら近づくと、やはり2人ともデカい。
「えーと、マンディさんと、サージさんはなんでここに?」
「サージで構わない。」
「俺もディでいいよ」
「わかった。」
俺が近づいた事で歩き出した2人に続き、関係者入口と書かれた所から会場内に入っていく。
すんげぇ行きたくねぇ。
「ジャックはさっきお偉いさんから呼び出されたからそっちに行かないといけないんだって」
なら帰らせろ、と思いながら眉を寄せると、サージが頭をポンポンと撫でる。
「なに?」
「頑張れ」
イラッとした。
「少しはあいつを止めるとかねぇのかよ」
「ははっ、無理だね」
「諦めろ。」
2人ともお手上げ、とばかりに手を上げるので、首を振ってため息をつく。
しばらく歩くと、控え室と書かれた部屋に案内される。扉が開けられ中に促されてはいると、さっきまで会場の注目を集めていたファフニールのメンバーである、グレイと、ミゲルと呼ばれていた2人がいた。
後から聞いた話だが、他のメンバーはジャックについて行ったものと、帰ってものとがいるらしい。
「なっ!こいつ!」
ミゲルが俺を見て指をさして立ち上がる。
俺は相手にせずに、奥にいるグレイに一直線に向かうと、腕を振り上げ殴る姿勢に入る。ガシッ!と拳を掴まれ、真正面からグレイと睨み合う。
「おうおう、ガキンチョ。随分な挨拶だな。」
「あぁ、そうだな。てめぇがあのクソ野郎に言わなければここに俺はいねぇもんな」
ギリギリと攻防戦を続けるが、もちろん力で叶うはずもなく、段々と押されている。
「言わなきゃ俺がジャックに殺されちまうんだよ」
「知らねぇよ殺されとけ、それとも俺がここで殺すか?」
「ガハッハッ過激派だなガキンチョ」
まだまだ余裕を見せるグレイに呆れ、力を抜くとグレイも俺の拳を解放する。
「チッ誰が嬉しくててめぇらなんかと」
「まぁまぁガキンチョ。タダ酒飲めるのと、そのユニフォームにジャックからサインもらうので手を打てよ。」
「サイン貰っても嬉しくねぇよ」
「価値は跳ね上がるぜ?」
「.....チッ」
グレイは楽しそうに笑うと、俺に肩を組んで入ってきた入り口に向かう。
「ま、とりあえず行こうぜ」
グレイに素直について行くのも癪だ。と思いながらも、どうせ逃げれないのだし素直にして、酒を飲んで帰ろう。そしてこれユニフォームにサインを貰ってさっさと売ってしまおう。
そうしよう。あ、ジャックがこのユニフォームを着ている写真でも一生に載せればもっと高く売れんじゃね?
いい事思いついたと思いながら、素直にグレイについていく。
「ちょ!待ってください!
なんでこいつを連れていくんですか!?」
ミゲルの声に、扉を出ようとしていたグレイも、その後に続こうとしていたディもサージも止まる。
たしかにもっともな意見だ。よし、そのまま俺を帰れるように説得しろ。
「なんでって」
「そりゃあ、」
「ジャックのお気に入りだからだろ。」
上から、ディ、サージ、グレイと言葉が続く。仲良いなおい。
「俺も帰りたい。」
「無理だな」
「俺たちが怒られちゃう。」
「諦めろ。」
また、上からサージ、ディ、グレイと言葉が続く。少しぐらい努力するとかないのかおい。
「いくぞ」と言って、グレイが俺に肩を組んだまま控え室を出る。いや、まだミゲル君は言いたいことがあるようですよ?不満そうな顔をするなら言えよ、そんでもって俺を解放しろ!と思うが、なぜかミゲル君はグレイに逆らわないで素直に後ろを着いてきてる。
いや、少しは頑張れよ。
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