ふざけんな!

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連れてこられたのはこの間とは違うBARだ。まぁ、違うBARと言っても、VIPルームには通されるようで、バーテンダーに案内される。 そのBARのVIPルームは、別に部屋ではなく、フロアより数段高い位置にソファとテーブルが並べてあり、近くに専用のバーテンダーがついているって感じだ。 簡単に他の人も入ってしまいそうだが、暗黙の了解で皆入らないらしい。 うん、くそ高そう。 どう見てもめちゃくちゃ高そうなこのBARにしり込みしていると、トンっと背中を押される。誰だ?と思って後ろを見ると、ディが俺の背中を押しながらソファに進める。 おい、強い強い。 押されるがままに歩くと、1番奥の1人用ソファに座らされる。いや、まて、嫌な予感しかしねぇ、あ、でも今回は俺の向かい側にも1人用のソファがあるから大丈夫かもしれない。え?大丈夫だよ?うん、大丈夫だ、そう、大丈夫だと思おう。 座った瞬間、ミゲルにギロッと睨まれたが睨み返すとフン!と鼻を鳴らしてそっぽを向く。へっ、一人でやってろ! 「ご注文は?」 そこら辺にアルコールの類が置かれているが、バーテンダーがわざわざ聞きに来てくれたので辺りを見渡す。まぁ、前回ジャックが言っていた通り、俺の好きな酒は甘い味なのでここには置いてなかったのでそれを注文すると、すぐに三本ほど氷水に入れられて持って来てくれた。 全員のそばに酒が並び、酒盛りが始まる。わいわいと盛り上がり、女性も何人か増えている。俺もなかなか酒が回り、ミゲル以外が女といちゃついているのを大人しく見ていた。 ザワザワ。 いきなり、ホールの方がざわめきが沸き立つ。ワインが入ったグラスを肘掛に置き、そちらを見るとどうやら人が入口の方に集まっているようだ。 「なんだあれ?」 「あ?ジャックが来たんだろ?」 「私ジャックと初めて会うわ!」 俺の問に答えるように言ったグレイに被せるように、嬉しそうに色めき立つ女。グレイが俺じゃダメなのかよっと笑っている。俺は逆に、ジャックが来たと聞いてゲンナリとした顔をする。 1つ舌打ちをしてもう一度ワインを煽ると、ようやく人混みをぬけたジャックがこちらに合流する。 本当にこの段差以上に人は登らないようで、皆が恨めしそうにチリジリになっていく。 「くっそ、あいつらいちいち群がりやがって」 ちっ、とジャックが舌打ちをしながらやってきて、俺の椅子の背もたれに手をかける。 ファンは大事にしろよ、と思うが言わないでおく。 「おうジャック。お偉いさんはどーだった?」 バカにするように笑うグレイに、ジャックは睨みつけるが効果はなく、ニヤニヤとグレイは聞いている。 「あのクソジジイども、もっと盛り上げられただの、実力差を思い知らせろだの言いやがって。こっちは次の試合も考えてゲームメイクしてんだよくそデブ共が」 グチグチと文句を垂れるジャックは、文句を言いながら俺の座っている椅子に座ろうとしてくる。 すかさず俺がジャックを押し返すが、全く意味をなさない。男としてムカつく。 「あっちが空いてんだろ!」 「あ?うるせぇ」 俺の言葉を無視して無理やり座ってくるジャックにイラつきながら席を立ち、もう1つの椅子に行こうとするが、その前にジャックに腰を掴まれる。 「離せ」 「逃げれるといいな」 くすくすと笑うジャックにイラつきながら、無駄に筋肉がしっかりとついているジャックの腕を叩くが、全くもって意味をなさない。渋々諦め、誰がジャックの膝の上に座るか!と思いながら肘掛に腰をかける。 ジャックはそれでもいいのか、何も言わず俺の腹に手をかけている。 ブーブーブーブー ジャックとファファニールのメンバーが真剣な顔をして話している途中に、俺のスマホのバイブ音が鳴る。ジャックの腕を叩いてスマホを見せると、意味がわかったのか手を離してくれるので、そのままバーカウンターに歩いてゆく。 「飲みやすいの」 そう言うと、バーテンダーはゆっくりと頷いて酒を作り始める。ざらつく木のカウンターに肘をかけ、かかってきた番号を眺める。 登録してない番号だ。俺のスマホの番号を知っているのは、父親か母親、まぁ両方とも可能性は少ない上に登録してある。あと、大学の友人達だが、そちらも登録はしてあるし、ジャックに消された人もほとんど戻ってきているはずだ。 首を傾げながら、バーテンダーがくれたカクテルで喉を潤してから通話ボタンを押す。 「もしもし」 『もしもし、コウスケさん?』 全く知らない声に首を傾げ、怪しいと思いながら返事を返す。 「あぁ、そうだけど。」 『よかった!世帯主にかからなかったから焦ったよ!』 「誰?てか、なんの用だよ」 『驚かずに聞いてくれ。』 変な前置きをする男をさらに怪しんで、何?と聞くと、爆弾が投下される。 『君の家が今燃えている。』 「........は?」 『火事だ。今火を消しているが、このままじゃ全焼。急いでこの持ち主に連絡を入れてくれ。あと、こっちに来てくれると嬉しい。』 「わかった。」 嘘だ、と思ったが、よくよく考えると消防からの電話番号だし、後ろから叫び声や何かが燃える音が聞こえてくる。 通話を切った後、嘘だろ。と頭を抱えるが、埒が明かないと思い後ろを振り返る。そこには真剣な話が終わったのか、未だに空いてないワインを片手に持っているジャックがいる。 「ジャック!!」 コルクを抜こうとしていた手が止まる。あ?と言いながらジャックがこちらを見てくるので、急いでジャックの方に走って行き胸ぐらを掴む。 「あ?なん」 「急いで車を出してくれ!」 「は?」 意味がわからねぇ、と言う顔をするジャックをグラグラと揺らす。 「今消防から連絡があって、家が火事なんだよ!ここで飲んでねーのジャックだけだろ?頼む!家に連れてってくれ!」 「.....利益がねぇ」 「はぁ!?」 ニヤニヤとしながらジャックが俺の手を掴む。胸ぐらを掴んでいた手は直ぐに離れ、ジャックの方に倒れ込む。肘置きに片膝を乗せ、片手をジャックの肩に置き、ジャックと瞳を合わせる。 「お礼は?」 出会った時と同じ。利益がないと動かないこいつに舌打ちを零す。しかし、俺にこいつの満足するような事が出来ないのは重々承知の事だ。チッと舌打ちをしてジャックを睨みつける。 「酒の酌を.....」 ジャックが眉を上げて楽しそうに笑う。まだ足りない。という合図に、イライラしながらさらにジャックを睨みつける。 「あーもう!何でも言う事聞くから!早く!」 ジャックがニヤリと笑う。 「のった。」
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