どゆこと?

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冷や汗が俺の頬を伝い、顎を伝い、喉を伝って服の中に入っていく。感覚が鋭くなりすぎて、冷や汗が服に染み込むのまで感じる。 「なん、で、お前、アイザック!」 「よぉ、日本人。」 ニヤリと笑うそいつを精一杯睨みつける。 見られた。サルジと話してるのを見られた。最悪だ。多分、アイザックならさっきの俺とサルジの行動でだいたい何をしているか分かったはずだ。でも、ケースは見られてないはず。 頭をフル回転させながらどうやってこの状態を切り抜けるかを考える。 アイザックの動向に気をつけながらケースを隠すように手を握り締める。 アイザックの手には、先程サルジを殴った物なかのか、赤いものが付いた木の棒を持っている。 「何しに来た?」 「何しにって、てめぇの持ってるもんにちっとばかし用があってな。」 アイザックが俺の手を指しながらそう言う。 っ!バレてる。ギュッと更に強く握りしめる。 「はっ、何のこと.....」 「それはスピリティングフラワーから、更に手を加えられた偽物だ。」 「なっ!」 まさかアイザックがそんなことを言うと思わず素で驚いてしまう。それが面白かったのか、アイザックは笑いながら俺の前に膝を折る。 ジリッと俺が微かに下がるが、アイザックを気にしない様子で俺の顔を覗き込んでくる。 「本物はこっち。そっちはこれを薄められて依存性を付けられている。」 「はっ、嘘だ」 「俺はそっちを数粒だけ欲しい。」 アイザックの言葉に眉を寄せると、アイザックは何か驚いたように少しだけ目を開き、直ぐに目をそらすと首を振って俺の前に同じようなケースを置く。 「それは?」 「本物のスピリティングフラワーだ。」 「確証は?」 「別に、持っていけば分かるだろう。俺はそっちを半分くれれば構わない。」 アイザックが言っていることが嘘と言うこともある、でも、俺の手元にこちらも数粒残る。別に嘘だろうと、こちらがめちゃくちゃ痛い訳では無い。むしろ、この申し出を断ってアイザックが本当のことを言っている場合の方が痛い。 そこまで考えてゴクリと唾を飲む。 覚悟は決まった。 アイザックの言葉に頷き、少しばかり体を前に出す。 「半分だな」 「あぁ、そちらのケースは1個丸々やろう。」 アイザックが大きく頷くので、アイザックが置いたケースを手に取る。俺が持っているケースよりも重い。本当にこれが全部スピリティングフラワーなら、相当実験に役立つはずだ。 俺がアイザックの置いたケースを手に取ると、直ぐにアイザックが俺の前に手を出してくる。俺は取ったケースをアイザックに奪われないように背中に隠し、手に持っているケースの蓋を開ける。 ザラザラと音を立ててこぼれ落ち、だいたい半分ぐらいというところで止める。 「これで、いいな。」 「あぁ。」 アイザックはそう言うと、ため息をつきながらだるそうに立ち上がる。ただそれだけの事なのに、ゴクリと唾を飲みこみながら見守る。 アイザックは透明なジップロックの中に錠剤を入れポケットに入れ込むと、またこちらを見てくる。 「なんだ。」 「こいつが酒に仕込んだのは興奮作用と、全身の力が抜ける薬だ。しょせんセックスドラッグだな。」 「なっ!」 「なんでお前があんま効かねぇかは深く聞かねぇけど、気をつけろ。それは遅効性だ。」 本当かどうかは分からないが、ゴクリを唾を飲んで自分の体を眺める。確かに、さっきから更に力が入りにくくなってきている。興奮するかは分からないが、確かに、アイザックが言った効果が少しばかり感じられる。 「お前、なんで、」 こんな事を?と聞く前に、アイザックが俺を真っ直ぐと射抜く。でも、分かる。アイザックは俺だが、俺以外の誰かを俺を通して見ている。俺に興味が向いている訳では無い。 「お前、勝平 浩司(こうじ)って知ってるか?」 アイザックの言葉に、アイザックが現れた時以上に目を見開く。しかし、目を見開いた瞬間ケースを放り出しアイザックに詰め寄るように立ち上がる。いや、上がろうとした。正確には、立ち上がる前に力が抜けて顔面から地面に倒れ込む。 それをも気にせずにアイザックを睨みつけると、アイザックは俺を見下ろすだけでなにも反応を見せない。 「なんで!!!なんでお前が!俺の.....」 「功祐!!!!!」 後ろから大声が聞こえる。この声は、聞きなれたジャックの声だ。 「じゃ、」 「てめぇ!」 ジャックがアイザックに詰め寄り、胸ぐらを掴もうとする。それよりも早くアイザックが避ける。 「やめろジャック!!」 近くにきたジャックの足を掴むと、ジャックの動きが止まる。 「おい!功祐!」 「頼む、俺はまだそいつと.....」 居ない。 いつの間にか消えてしまったアイザックに、俺はこの意味のわからないモヤモヤを抱え、ジャックは苛立ったように舌打ちを零す。 「功祐。怪我は?」 しかし、ジャックは直ぐに俺の前に膝を着くと、俺の両脇に腕を入れて持ち上げる。目の高さにジャックの顔がきて、何故か安心してため息をつく。 「無い、大丈夫だ。」 「そうか。」 ジャックはくシャリと顔を歪めると、優しく俺を抱きしめる。 「ジャック?」 「悪い、俺が巻き込んだ。俺のせいで、」 悪い。と謝るジャックに、どうしていいのかあたふたしてしまう。ジャックの制止を振り切って勝手にケニーに力を貸したのは俺だ。ジャックは別に悪くない。 「別に、俺は、そ、それよりジャック!あいつの怪我を」 「どいつだ?」 ジャックの肩をポンポンと叩くと、ジャックは俺を片腕で抱き抱えたままサルジのそばによる。 「サルジって名乗ってた。あのケースを持っていた男だ。」 そう言って落としたケースを指さすと、ジャックはそれのそばに寄って手に取る。その時意外に落ちそうだったのでしっかりとジャックの首に腕を回す。 あ、ジャックの匂いと、俺達が使ってる柔軟剤が混ざってる。 安心する香りを感じながらジャックに身を任せる。もう暴れる気力もない。全身に力は入らないし、何だか体が熱くなっている気がする。あと、酷い眠気だ。 「功祐。2つある。」 「ん、重い方がスピリティングフラワーらしい。」 「軽い方は?」 「なんか、改良されたやつらしい。」 「改良?」 「ん」 ジャックが首を捻っているが、もう説明する気にすらならない大人しくジャックの体に体重を掛けてため息をつく。 「功祐?」 「ん〜」 大きく息を吐きながら熱を逃がす。もう手足の感覚が消えてきた。ジャックの肌が冷たくて気持ちよくて、額を首に擦り付ける。 「・・・。おい、ドルタ。」 ジャックが動き出す。気を使っているのか、全く揺れない。でも、体の熱はだんだん持ち始めるし、もうジャックの服を掴んでいるのが精一杯なほど手足の感覚が消えている。 「功祐?」 「んう。」 ドルタと話が終わったのか、ジャックがまた歩き出す。 「功祐。大丈夫か?」 「うん。」 もう手足の感覚がない。 ジャックは何かに乗り込むと、俺を何かに寝かせて消える。 ジャックの熱が消える。なんだか負担になって目を開けてジャックを探す。 車の中? 「功祐、動くぞ」 ジャックを探していた手がジャックの手に取られ、ゆっくりと車が発進する。 やばい、体が、暑い。
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