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暗い暗闇を感じさせ無いほどのライトに囲まれ、夜中だろうと人足が耐えない街の一角に、人が少ないBARが1軒。
「おっしゃあ〜!!!これで次は全米戦だ!今日はお疲れ様だ野郎ども、カンパーイ!!」
うぉぉ!!と太い声が上がると共に、グラスが当たる音がそこら辺で響く。
乾杯の温度をあげたのは、最近試合に出場するようになってきたミゲルだ。何人かの新人も入り、ファフニールは快勝を続けている。まぁ、未だに主戦力である4人を中心とした戦力となっているが。
「ガキンチョ〜、飲んでるかぁ!?」
ほれほれ!と強い酒を頬に押し付けてくるグレイに苦笑しながら肩を組む。
「お前、折れた腕は大丈夫なのかよ?」
数日前に喧嘩をして折ったはずの腕のことを聞くが、ギブスも嵌めずに腕を使っている。いや、マジかお前。
「あ?なんなもん寝て酒飲んでりゃ治るわ!」
ガハハハッ!と豪快に笑うグレイに、こいつ人間じゃねぇ。と思っていると、メアリが直ぐにグレイを咎めるために腕を掴む。
あ、ちなみにこいつら付き合っているらしい。俺的にはグレイなんてめちゃくちゃ大変そうだが、メアリからしたら幸せな時間だとか。
「グレイ、あなた明日病院よ!お酒は控えて!」
「あ?いいじゃねぇか。」
ダメよ!と母親のように咎めるメアリに、グレイがしゅんとなる。うん、凄いぐらいに躾られている。
「功祐。」
2人のラブラブを眺めていると、後ろから声をかけられるので振り向くと、予想通りの人が立っていた。
「サージ」
酒瓶を片手にこいこいと手招きをするサージと、横にはトランプを持ったディのほか、3人の男がテーブルを囲んでいる。
「お前、ディーラーできるか?」
ディーラーと言われ、ディの手にあるトランプを見て納得する。たぶん、他の女にやらせたらお気に入りを贔屓するかもしれないし、自分たちで配ってもイカサマしないとは限らない。だから、ジャックだろうと贔屓はしない俺が呼ばれたのだろう。
まぁ、今この場にジャックは居ないが。
「出来る」
「お、じゃあ、頼むわ」
ディに言われ、頷きながらいつの間にかディが持っていたトランプを受け取る。パラパラと捲り慣れたそれを数える。
「ディ。」
「ん?」
「1枚出せ。」
ほら、と言いながら手を出すと、ディは舌を出しながら俺の上に1枚カードを置く。
「チ〜、ミゲルは騙されたのになぁー」
「あいつ、騙されたのか。」
誰かが持っていたカードを数えるなんて、初歩中の初歩の事なのに、と驚いていると、サージがソファの奥を指さす。
そちらを見ると、落ち込んで丸くなっているミゲルが見える。思った以上にデカい体が小さくなっていないので、ぶはっ!と吹き出して笑うと、サージもディも一緒に笑う。
「ディーラーがイカサマの引っかかったら行けないよねぇ」
「だから、バスケでも騙される。」
「ははっ、ボロくそだな。」
ディ、サージ、俺の順で言うと、ミゲルは聞こえていたのか肩を跳ねさせ、恨めしそうに俺を睨む。
俺はそれに笑うだけで答え、いつもの定位置、一人ソファの席に座る。いつもよりソファが柔らかいし、大きく感じながらカードをきりながらディがしているゲームの案内を聞く。
「やるのはブラックジャック。最低レートは500ドル。現金以外は認めないぜ?」
持ってきてるよな?と言うマンディに、皆がポケットから丸くまとめた札束を出す。毎回思うが、レート500ドルにしてるくせに、最初っから1000ドル近いってどうゆう事だよ。いつも意味わかんねぇぐらい金を出しているこいつらを不思議に思いながらカードをきり終わる。
「最後に、ここは終わったカードは捨てない。またこのなかに戻すから記憶力が良くても意味はねぇぜ?」
ありえないルールだが、ここでは当たり前なのか文句のひとつもなくディから目で合図される。
頷いて手を出すと、それぞれから手のひらに5000ドルずつ手のひらに乗せてくる。合計25000ドルにうわぁ〜なんて思いながら自分の横に金を積む。
ここでのディーラーの仕事は簡単。ディーラーの持ち金は客の金。ディーラーの持ち金が無くなった時点でゲームは終了。もしくは、終了まてディーラーが持っていた場合はディーラーの金となる。大抵は無くなるまでするので、得もしなければ損もしないのがここでのルールのディーラーだ。
全員分の金が積まれたことを確認し、カードを手に持つ。
「いいか?」
「あぁ、頼む。」
サージの言葉に頷き、まずはアップカードを配る。そして直ぐに2枚目を配り、それぞれの手を見る。3人が再度要求してきたのでカードを渡し、それで要求は終わる。
その様子に頷き、自分のカードを捲る。Qと10のカード。
お、すげぇ。5人とも負けると思ったのか、早々にゲームを降りる合図をしてくるのでお金を集める。
そんなことを何度も繰り返し、俺の持っているお金もだいぶ減ってきた。今のところ勝っているのは、サージと知らない3人の内の1人だ。
「あー!やめだやめ!取り返せる気がしねぇ!」
「ん〜、俺も無理かな〜。」
1人が叫ぶと、ディも降りる。と言う合図をしてくる。他の3人の見ると、続けると意志を示して来るのでまたカードを配る。
「どうぞ。」
カードを配り、自分のカードをめくっていく。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
ディがさっさと席を立ち、俺にカクテルを渡して来るのでカードを捲りながら受け取る。
「あ、飛んだな。」
勝っていた2人に比べ、少なかった1人の持ち金が無くなる。
「またやっちゃった。」
ヘラヘラと笑い、彼がカードをこちらに渡してくるので、受け取る。
「どうされます?」
俺が2人にそう聞くと、2人はアイコンタクトをし合う。
「「続ける。」」
バン!!!
2人の声が揃ったと同時に、どこからかドカドカという音が聞こえてくる。と同時に、真っ直ぐにこちらに向かってきているので、直ぐに誰だか分かるとサージがお金を片付け始める。
うん、潔くていいと思う。あいつは神様に天運まで貰ってるからな。たぶん今日の勝ち金なんか秒で持っていかれるからな。うんうん、と頷いていると、直ぐに俺の横に影が落ちる。
「喉乾いた。」
「はいはい。」
不機嫌そうに言ってくるそいつに呆れながら、俺の持っているカクテルを上に上げる。そいつはそれを受け取ると、なかなか度数が強いはずだが、ごくごくとさっさと飲んでしまうとテーブルに置く。なかなか気に入ってるカクテルだったのに。まぁ、あとからディに聞けばいいか。
「よお、ジャック。どうだった?」
「あ?」
「スポンサーの様子」
ディとサージがそう言うと、ジャックが眉を寄せる。どうやらジャックはそのおっさん共の事が大っ嫌いらしい。俺は知らんからそうか、しか言えんが、他のメンバーも同感なのかどんまい。みたいな顔で見ている。
「いつも通りだよ。豚共がブヒブヒ言って叫んで会話してるだけだ。」
「なんか、適当な服着てね。」
「服が可哀想。」
「違ぇねぇ。」
お、おう。ボロくそだな。3人、とくに温厚なサージにも言われるおっさんたちを想像してげんなりする。なんか、漫画や映画でみる腹の探り合いみたいな事してそうだよな。
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