408人が本棚に入れています
本棚に追加
エプロンを付けてキッチンに立っている。フライパンにはベーコンがいい色に仕上がっているのでその上に目玉焼きを乗せる。4枚の分厚いベーコンに対し、2つの卵を落として目玉焼きを作る。
ぎりゅゅゅゅゆり〜、とお腹が空いてそうな音を立てたのは目の前に座る男。キッチンのカウンターの顎を乗せ、早くとばかりに皿だけを目の前に用意して待っている。いつものも見慣れた光景に笑みを浮かべ、ちょうどいい音を立ててトースターから出てきたパンをジャックの皿の前に乗せる。目玉焼きを半分に切り、2枚のベーコンと1枚の目玉焼きをが1つになったものをジャックのパンの上に置く。
「はい、どうぞ。」
「おう」
待ってましたとばかりにパンにかぶりつくジャックを笑って見ながら、自分の分のパンにも盛り付ける。オレンジジュースを置いて、ジャックの横に座る。
「いただきます。」
手を合わせてパンを食べると、サクッとしたパンが美味い。黄身を壊しながらサクサクと食べていく。ベーコンと卵のマッチが美味く、プラスパンのサクサク具合が半端ない。
「おかわり。」
もう食べ終わったのか、ジャックが俺に皿を差し出してくる。
「ねーよ。」
「足りねぇ。」
「今日は今から外出るんだろ。どうせ食べるだろ。」
ムッと顔をしたジャックは、直ぐに意地悪な笑みに変わる。うん、嫌な予感。
嫌な予感がする。と思った瞬間、ジャックが口を開けて俺の方に近づいてくる。
「あ、ちょ!」
カブリ。俺の朝食であるパンの反対側を、思いっきり食べられる。もぐもぐと口いっぱいに入れた俺のパンを食べるジャックに俺は絶句する。
「はっ、ありがと」
ドヤ、とした顔で言ってくるジャック。
「お、俺のジ○リパン!!!」
しっかりちゃっかり食べやがったジャックに叫ぶと、ジャックは楽しそうに笑うばかりで反省しようとしない。
こいつ!!
ピンポーン。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
突然のチャイム音に、ジャックと目を見合いぱちくりとする。この家を知っているのはファフニールのメンバーとメアリぐらいだ。今日そのメンバーから来るという連絡は受けない。ここに運び込まれるほど大きな買い物をした覚えもない。
ピンポーン。
再度鳴らされるチャイムに、またジャックと顔を見合う。
「なんか聞いてるか?」
「いや、なんも。」
ピンポーン。
「結構呼んでるけど。」
「無視で行くか。」
ピンポーン。
どんどん鳴らすタイミングが早くなってきているチャイムに首を傾げる。ジャックは本気で無視をするつもりなのか、コーヒーを口に運んで新聞を読んでいる。
ピンポーン。
「ジャック?」
「無視だ。」
ピンポーン。
・・・・・・
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンポーン。
連打でなるチャイムに、ヒクッと口端が引き攣る。
「いや、怖ーよ。」
ジャック。と声をかけると、面倒くさそうに立ち上がってジャックが玄関の方に行く。俺はそちらを気にしながらも食器を簡単に洗って食洗機に入れる。
「きゃー!!ジャック〜〜!会いたかった〜〜!」
高い歓喜の声とともにガタン!という音が聞こえる。女性が来て、ジャックの知り合い、いや、元カノかな?が、抱きついてきてジャックが倒れた。うん、こんなところか。うんうん。と頷いて放置する。
え?見に行かないのって?嫌だよ。嫉妬するじゃん。どうせモデル並みに可愛くてスタイルいい人だ。嫉妬もするし、寂しくなるし、俺でいいのかとか考えるからそれなら見ない方がマシだ。
「さて、お前の愛おしいのフィアンセはどこにいるのかな?」
「はぁ!?」
続いて聞こえてきたのは男性の声と、ジャックが驚く声。
「ちょ、ま!離せよ!いつまでも抱きつくな!」
「嫌よ!久々の再開なのに!」
「うむ、存分に。俺はフィアンセを探そう。」
いや、さすがにカオスにきょゲフン。ジャックが心配になってきたので廊下から玄関の方をピョコリと覗く。そこには、めっちゃ綺麗な、いや、モデルとかじゃない。まじで女優って言われても信じれるぐらい綺麗な女性がジャックに抱きついて廊下に押し倒しており、その後ろにはニコニコと笑っている男性。いや、こっちもバチくそかっこいいなおい。スーツを着て薄い色をした髪を後ろに流している男性。こっちもまじで俳優なみだ。
バチッ。
あ、男の人と目が合った。とりあえず頭を下げるが、このカオスな状態で放置していいのか迷いとりあえず見守る。
「君は、」
「あぁ!」
「あ"ぁ"!?」
男性がジャックを跨いで俺の方に来る。俺は驚いてビクッ!とすると、男性はニコニコとしながら俺の前に膝を着く。いや、まて、ジャックよりは低いが相当身長高いぞ。
「あぁ!ずるいわアーロン!」
「まぁ、そう言うなクリスティーナ。」
クリスティーナと呼ばれた女性がバタバタと音を立てて俺の前に座る。その時にジャックは腹を踏まれたらしく、丸くなって痛がっている。不憫な。
「おやおや」
「まさか、」
女性が俺の右頬をつつく。男子は俺の左の頬を揉む。
「まだ若いな。」
「いや〜ん!可愛い〜!」
いや、綺麗な男女にそれを言われても、と思って大人しくするが、頬が引き攣りそうだ。
「っ!なに、してんだよ!母さん!父さん!」
「へ?」
ジャックの言葉に驚いて2人を見ると、楽しそうに笑っている。いや、まさか、いや、
「やぁ、初めまして。ジャックのフィアンセ。私はアーロン・ヴァン・マシューズだ。」
「ふふっ、私はクリスティーナ・ヴァン・マシューズよ。」
「「よろしくね。」」
ま、まじかよ。
最初のコメントを投稿しよう!