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ヒクッと引き攣っていると、ジャックの母親、クリスティーナさんからがバッ!と抱きつかれる。ビクゥ!と反応する俺が面白いのか、アーロンさんは笑っている。
「いや〜〜!!可愛いかわいいかわいい!ジャックたら!日本人の彼女出来たのに言わないんだから!!」
「いや〜、ジャックが初めての彼女であるサラちゃんを連れてきて早十数年、遊んでばかりいると思っていたら日本人の彼女が出来るとはな。」
グリグリと頭を撫でてくるアーロンさんに大人しく撫でられる。えっと?
「俺、男.....」
言ってから後悔する。いや、女に間違われる容姿はしてないけど、勘違いされてたらダメだし!でも、反対する親だったらもちろん身を引くし、
「あ〜、そうよね!ごめんね!男の子なら可愛いはダメよね?愛らしい?可愛らしい?」
「クリス、どちらもダメじゃないかな?」
「え〜!だってとっても可愛いんだもの!」
さらにギュ〜!と抱きつかれ、俺は目を白黒させる。いや!めっちゃいい香り!てか、胸!胸が!ジャックの、こ、恋人の母親だけど!
「クリス、次は私の番だよ。」
「え〜!まだ足りなーい!」
「ダメだ。」
よく分からない会話を頭の上でされ、ようやくクリスティーナさんから頭を解放され大きく息を吸う。死ぬかと思っぶふっ!
次はアーロンさんに抱きつかれた。いや、うん、ジャックのお父さんなのに加齢臭なんてなくて、むしろいい香りがする。しかも、うん、なんとも言えない男!って感じの弾力が兄貴に抱えられているみたいで心地いい。いや、俺に兄貴いねぇけど。
「ふむ、ジャックが中学生ぐらいの大きさかな?」
「そんぐらいね〜。可愛いわよね〜。」
のほほんと話すマシューズ夫妻。それって!俺が小さいって事ですか!心の中で抗議しながら何かに引っかかる。中学生、中学生って言った!?!?冗談だろ!?中学生で170とかバカでかいわ!
「っ!父さん!母さん!離せ!」
グイッ!と引っ張られたかと思うと、いつもの弾力と大きさが俺を包む。おっふ、硬い。
「嫌だな〜、ジャック。お前のフィアンセを取るつもりはないよ。」
「そうよ〜!ジャックったらなかなか抱きつかせてくれないんだもの!それなら功祐君を抱っこするしかないじゃない!」
「だ、か、ら!!!いい大人に抱きつくなって言ってんだよ!!」
嫌よ!とギャーギャー言い始めたジャックとクリスティーナさんに、引き攣りながら笑って見ているとアーロンさんと目が合う。どうやらアーロンさんは喧嘩に入るつもりはないらしい。
「とりあえず、コーヒーでも入れましょうか?」
「それは、是非頂こう。」
ニコニコと笑うアーロンさんを奥に案内し、俺はいつものようにコーヒーを入れる。
ちなみに、ジャックとクリスティーナさんがリビングに来たのは約15分後だ。
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4人分のコーヒーをつぎ、ようやく全員が一息つく。ジャックは荒々しい飲むのに対して、マシューズ夫妻は丁寧にコーヒーに口をつける。うん、どこで間違ったんだろうな。たぶん、顔のレベル的にジャックの親ということは間違えないんだろうけど、どうも所作が違いすぎて首をかしげたくなる。
「で、何しに来たんだよ。」
はぁ。と大きくため息をついて頭を抱えているジャックに、クリスティーナさんとアーロンさんはにこにこと笑っている。
「もちろん、最近世間を賑わせてる息子に会いに来たんだよ。」
「ってのはついでで!グレイ君から恋人が出来たって聞いて。どうせジャックは連れてこないだろうからって来たの!」
ねー!と2人で声を合わせて言うマシューズ夫妻。うん、可愛いなおい。
本当にジャックを産んでいるとは思えないほどの若さと元気さに驚きながらマシューズ夫妻を眺める。ジャックはそんな両親を見ながら頭を抱えている。
「グレイ」
怒ったような声音のジャックに、あ、グレイ明日死んだかもな。なんて思いながらコーヒーを飲んでいると、不意に視線を感じそちらを見る。すると、そこには、クリスティーナさんが俺を眺めており、首を傾げると、クリスティーナさんも笑いながら首をかしげる。
「どうかしました?」
「うんん!ただ、ジャックが選んだのも分かるな〜って思ってただけよ!」
意味が分からずに首をさらに傾げると、アーロンさんもうんうんと頷いている。うん、ますます分からん。
「そうだね。ジャックは彼女の趣味だけは私たちにそっくりすぎるからね。」
うんうんと深く頷くアーロンさん。うん、分かりません。理解の範疇を超えております。
「悪かったな2人に似て。てか、用が終わったんならさっさと帰れ。」
「えー!酷いジャック!せっかくここまで来たのに追い出すなんて!」
「誰も来てくれなんて言ってねぇよ!」
拗ねたように話すクリスティーナさんに噛み付くジャック。仲良いことでいい思う。うん。
「うんま!ひどい!私あなたをそんな子に育てた覚えはないわよ!」
「独り立ちした立派な息子で鼻が高いだろうが!」
「ひどい!せっかく今日はジャックの家に泊まって久々に添い寝をしてあげようと思ったのに!」
「はぁ!?」
ジャックの驚く声と一緒のタイミングで俺も驚く。ジャックと一緒に寝るって事は、俺は帰らないといけないと言うことだ。事実、ここにベッドがある部屋はジャックと俺が使っている寝室だけだ。
「うん、クリスがジャックと寝ると聞かないから、私たちが一緒に寝ようか、ね?」
「へ?俺?」
そうしよう!と言ってくるアーロンさんに戸惑いながら頷くとジャックから腕を引かれ抱き込まれる。おぉ、体が浮いたぞ。
「絶てぇダメだ!」
「そうよアーロン!私も一緒に功祐くんと寝たいわ!」
「そこじゃねぇ!」
アーロンさんとクリスティーナさんとジャックのワイワイとした声が聞こえる中、静かにジャックに抱かれている。うん、カオス。
「まぁ、冗談はここら辺にしよう。」
「そうね!」
突然言い合いを止めてケロッとした様子で言い始めるマシューズ夫妻に、ジャックが再度頭を抱える。うん、まぁ、気持ち分かるわ。
「冗談が長いんだよ。」
確かに長かった。かれこれ1時間以上その冗談とやらをやってたからな。しかも冗談か冗談じゃないのかよく分からんかった。てか、どこまでが冗談?え、まさか全部?
「まぁ、いいじゃないか。久々にに息子と会えたんだから。」
「そうよ!しかも恋人にまで会えて!いい一日だわ!」
恋人!と驚いて赤くなる。それにより、マシューズ夫妻の的となりあらあら、うふふっと笑われた。もっと恥ずかしい。
「分かったわかった。で、要件は?」
「結構本気で顔を見に来ただけだよ。」
「はぁ!?」
「あと、今晩のご飯でも一緒にどうかなって。」
ね?と聞いてくるクリスティーナさんに、え、と動きを停めてしまう。
「ほら、もう昼になる。私たちは買い物も行きたいんだ。」
「2人でいけ!」
「嫌よ!迷子になっちゃうじゃない!」
ジャックの両脇を挟み、腕を引っ張るマシューズ夫妻はジャックを連れていくき満々のようだ。
「さぁ、行くぞ息子たち。」
「レッツゴー!」
イェーイ!とテンションを上げるマシューズ夫妻。ん?息子たち?
「ほら!どうした功祐君!行くぞ!」
「そうそう!早く行くわよこうちゃん!」
俺!?目をぱちくりとさせ、驚きながらジャックを見るとしてやったり顔で俺を見てくる。まぁ、うん。やられたはこれは。うん。やべぇーわ。うんうんと頷きながら、心の底に広がる嬉しさが表情に行ってしまう。
「ありがとうございます。」
そう言うとマシューズ夫妻も嬉しそうに笑う。
「早く功祐くんもマシューズにならないとな」
「功祐・マシューズ?いいじゃない!」
キャッキャウフフと騒ぎ出すマシューズ夫妻に、腕を持たれて振り回されるジャックは吐きそうな顔をしている。え、いや、大丈夫?袋いる?
「でも、すいません。外は記者が大量なので、俺がいたら不審がられるので。」
そう言うと、マシューズ夫妻の動きが止まり、考えるように顎に手を当てる。流石です。さまになってます。まじでカメラで撮りたいほどかっこいいっす。
「確かにそうだね。私たちはジャックの親と顔が知られているから。」
「えー!あの記者達のせい!?」
はしゃいでいたのが嘘のように怒り出すクリスティーナさん。それをアーロンさんがなだめているが、今にも記者に殴りかかりそうなほど憤怒している。あぶ、いや、逃げろ記者。俺でも勝てなさそうなほどの拳のキレだ。
え、クリスティーナさん怖い。と思いながら見ていると、ようやく話はまとまったらしい。
「じゃあ、功祐くん。ご飯はまた今度一緒にいこうか。」
「絶対の絶対!約束よ?」
「頷かねぇと叩かれ.....いってぇ!」
余計なことを言おうとしたジャックに、クリスティーナさんの鋭い一撃がはいる。おふっ、KOだな。カンカンカンカン!と頭の中でゴングが鳴り響いた気がする。
「はい。楽しみにしてます。」
そう言うと、アーロンさんとクリスティーナさんが俺の頭を1回ずつなでて家を出ていく。もちろん、ジャックは引きずられている。最後まで行きたくないだのどうだのごねていた。
うん、頑張れ。
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