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「まぁ、やられたな。」
香里奈がそう言って大量の雑誌や新聞などをテーブルに投げる。全ての雑誌の表紙や一面に大きく掲載されている言葉は、【バスケットプレイヤージャックの恋人を激写!】というものだ。もちろん、俺の顔にはモザイクがかかっている。
そして、特に反響があった新聞社がバーザッシ社。もちろん、あのキス写真を持っていたところのだ。バーザッシ社の雑誌には、しっかり俺とジャックのキス写真が載せられている。
「ジャックは、どうなる?」
「まぁ、同性愛者ってことで叩かれはするだろう。あとは、」
バーザッシ社の奴を殴ったジャックの映像がテレビから流れる。それを顎で示す香里奈。つまりそうゆうことだ。今もテレビで放映されているがそれは賛否両論。むしろ、バーザッシ社が悪いという声が大きいかもしれない。
バーザッシ社に手柄を独り占めされた会社が、バーザッシ社に対抗するためにジャックの喧嘩の映像を最初から最後まで流してくれている影響が強い。世間は、ジャックの恋人をそんなふうに言うのが悪いや、ジャックが隠しきれないのが悪い。同性愛者ならそんなもんだろ。という声が大きい。
「俺のせいだ」
「浩祐。」
香里奈は何も答えずに肩だけをあげる。ニアは俺を心配するようにポンポンと背中を叩いてくれる。バーテンダーも酒を差し出してくれるが、飲み気分にもならない。
「ジャックは今どこに?」
「記者会見の準備だろうな。あと、NBAの契約者との話し合いだろ。」
香里奈の言葉にはっとする。そうだ、ジャックは来年からNBAが決まっているのだ。なのにこんな騒動を起こした。
「NBAの契約はどうなる!?」
香里奈の後ろに仕えていたドルタが香里奈に写真を1枚渡し、香里奈はテーブルの上に投げる。
「そいつがジャックとの契約者であるレーゲン。まぁ、デブデブのクソジジイだ。」
香里奈が言う通り写真に映るやつはデブデブでクソジジイっぽい。いかにも悪徳商法で成り上がりましたって感じの顔をしている。
「こいつが?」
ジャックが契約を結ぶには意外だった。ジャックはこういうやつを嫌う。だから契約も選んでいるのかと。
「ジャックと契約を結んだのはその前任だ。まぁ、突然引退してそいつに引き継がれた。」
「つまり」
「まぁ、裏はあるな。単純に、ジャックに群がる女どもが目当てだったんだろ。」
クズだな。なんて思って首を傾げる。
「こいつに、なんかあるのか?」
なんかないのならば、香里奈が俺に写真を見せて情報まで教えてくれるはずがない。何かあるかつ、嫌なことが起きそうだ。
「そいつは極度の、同性愛者拒否の過激派だ。」
「なっ!」
驚いて香里奈を見ると、まぁ、ジャックは大変だ。と言いながら笑う。いや!少しは心配しないのか!
「契約が切られるのはほぼ確定だ。後はジャックがNBAに出れないように裏から手を回すかどうかだな。」
「そんなことが出来るのか?」
「まぁ、なかなかデカい会社だからな。業績が下がっているからと言って影響力がすくなるなると言うことはない。」
ギュッと手を握り締める。どう転んでもジャックの悪い方向にしか行かない。しかも、俺のせいで。俺があいつに反応せずにスルー出来ていたら、まだ罰ゲームとかでながせた。なのに、俺のせいで。
「今は静かに隠れとけ。」
出来ることは無い。と言う香里奈の言葉に頷く。俺は、無力だ。
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【本日、バスケットプレイヤーであるジャック・ヴァン・マシューズ選手の熱愛報道が出ました。相手はなんと日本人の男性との事。街では、驚きの声とともに残念がる声が広がっています。】
ガランとしたリビング。何もせずにソファにただ座ってテレビをつけていると、ひとつのニュースが耳に飛び込んでくる。アメリカの報道番組を日本語版にしたものだ。
「こう、すけ?」
アメリカのどこかで、幸せそうにキスをしている男同士。驚きすぎて目を見開いていると、画面が切り変わろうとする。
「まっ!」
て。と言う前に画面は変わる。だが、そんなことよりも浩祐の事だ。何年も横に並んできた。何年も一緒に写真を撮った。その写真はこの1年で擦り切れるほど見ていた。間違えるはずがない。浩祐を忘れるはずがない。どこを探しても居ないと思った。どこに行ったのかと手当り次第に探した。でもいなかった。そりゃあ、居ないはずだ。アメリカにいるなんて。
急いでスマホを開く。大量の通知が来ているが気にならない。どうせ数日に1回しか返信してない。他人も同然の奴らだ。
「ジャック、ジャック、誰だった?」
テレビでなんと言われてたか分からない。覚えてないけど探す。
「そうだ、バスケ」
バスケットプレイヤーで探すと、3人程がヒットする。と同時に、熱愛報道!と言う物が出てくる。
「いた、浩祐。」
間違えない。浩祐だ。知らない外人とキスをしている浩祐。ずっと探してた。ようやく見つけた。やっと、やっと会いに行ける。
「浩祐。」
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