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バンバンと鳴り響く香里奈のBARで人が踊っている間を通り抜ける。スルスルと抜け、ようやく人が少ない階段の場所について一息つく。人が多い。
「繁盛してんな。」
1杯20ドルもする高級BAR。なのに、毎日がパーティのように派手に人で溢れかえっている。壁に寄りかかりながらその様子を見るが、誰もがお互いに知らない人を見るような目で見ている。誰も彼もが顔が売れたような人物ばかりなのに。
まぁ、いいや。と思いながらスったタバコをの銘柄を見る。うえっ!?驚きすぎて一瞬落としかけるが、しっかりと掴み直す。まてまてまて。これって3年前に無くなった銘柄だぞ!?確か人気過ぎて生産が追いつかなかったのと、コカインと一緒に吸うと最高な配合にしてあったから中止になったはずだ。
え、これ、返す?返さねぇとやべぇよな?え、まじやばいって。
「功祐。」
「つうぉぉお!」
ポン!と肩を叩かれ驚いて声を上げる。
「きゃっ!なに!」
「あ、ニア」
慌てたように後ろをむくと、そこには給仕の格好をしたニアが居た。呆れたようにため息をつかれたので、苦笑しながらニアの方をむく。
「なんでそんなに驚いたの?」
「いや、これ、スっちゃって。」
少し気まずいが、ははっ、と笑いながらそれを見せると、ニアは驚いたように声を上げる。
「まっ!それっムッグッゥウ!」
慌てて口を塞いでシー!!っと指を立てる。これはこれから持ち主に黙って戻すつもりだ、だからニアに叫ばれるとバレてしまう!
「返すから!返すから!」
「アホなの!それ持ってるの大企業の御曹司よ!?ここには人脈作りに来てるから相当色々な人脈があるのよ!」
それを聞いてサッと血が引く。え、ドラム缶でコンクリ漬けで海ドボーン行っちゃう?まじ?やばい?え、俺死ぬ?
「ま、まぁ、落ち着け、返してくるから、確実にかえすか」
「おや、返してくれるならとってもありがたいですねぇ。」
「「ヒッ!」」
突然後ろから聞こえてきた声に、ニアと2人で肩を揺らす。驚きすぎて心臓が痛くなったのは内緒だ。バクバクとなる心臓を気にしないように後ろをむくと、そこにいるのはニコニコと笑った優男。でも、後ろの黒服めっちゃ怖い。
「やぁ、君が勝平君だね。」
ポン。と肩に手を置かれる。いや、怖い怖い怖い。え、てか、この人。
「え、あの、」
「まぁ、詳しい話は部屋でしようか。」
グイッと肩を抱かれ、引っ張られる。怖すぎてニアを見るが、自業自得とばかりに首を振られる。待って!!!こわい!!まだ死にたくないよ!!!
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「はぁ。で?」
俺の目の前には呆れたようにため息を吐く香里奈がおり、横には肩を組んだまま笑うさっきの優男。しっかり後ろには黒服さんがいます。怖いです。
「はっはっはっ!さっきこの子が俺のタバコを取っていったからね。ちょっと主とお話し合いをしようかと。」
豪快に笑う優男さんだが、俺の肩を持っている手はしっかりと肩に力が入っている。あ、ちょっと痛い。
「はぁ。わざと取らせたくせに何を」
「はっはっはっ。僕がわざと私物を取らせて君に迷惑をかけると思うかい?」
「思う。てか、それ以外考えられん。」
わはっはっ!と笑う優男。いや、怖いて。笑いながら肩を抱き寄せられるので、精一杯の抵抗として腹筋に力を入れるがどんどん近づく。いや、嫌やて
「まぁ、その事は一旦置いといて。どうだい君。俺の部下にならないかい」
な?と笑いかけてくるそいつに思いっきり顔を歪めてやる。どこが一旦置いといて、だよ。全く置けてねぇよ。置いてねぇから聞いてくんだろうが。グイグイと顔を近づけてくる優男に、舌打ちを我慢しながら体を押しかえす。
「いえ、俺では力不足なので」
「そんなことないよ。僕が手取り足取り教えてあげるから。」
「イエイエ、俺ニハソンナ価値ナイデスヨ」
怒りを抑えるあまりカタコトになるが俺は悪くない。こいつが悪い。てか、こいつじゃ無かったら誰が悪いんだよ!いや、俺か。
俺がタバコスったんだった。と凹む。
「おい、やめてやれ。」
「え〜なんでだい香里奈?彼は、もう少しで落ちそうなのに。」
んなことぁ〜ない。
「んなわけあるか。顔を見ろ顔を。」
香里奈の正解にグ!と親指を小さく立てる。それに気づいた香里奈は、また頭を抱えてため息をついた。
「え〜、いいじゃないか。香里奈の部下は優秀なのが揃っているんだから。あ、そこのお嬢ちゃんもおいでよ〜。」
そう言ってニアにニコニコとしながら手招きをする優男。ニアは、香里奈と対等に話せる男の誘いを断っていいのかとオロオロしている。おい、そこで出ないと行けないんだぞドルタ。
ニアが選ばれたことに一瞬動揺したが、関係ないとばかりに顔を前に向けて知らぬぞんねぬ顔を作っている。あ、香里奈から尻を叩かれた。スパン!といい音をさせてドルタが数歩前に出る。
「ノン。お前ジャックに殴られてもいいならそのまま男を抱いておけ。私が写真付きで送ってやる。」
「?」
本当にどうゆうこと?と言うような顔をしてノンが俺の方を見てくる。俺もジーっと見返すと、ノンは驚いた!と言うような顔に変わる。
「まさか!この子が噂の彼なのかい?」
「芝居はいい。」
ウザイ。と言うように首を振る香里奈に、ノンはありえない!と言うよに大きな身振り手振りをする。
「本気だよ!まさかこの子だったとは!黒髪だから、アジア経由でとは思っていたけど日本人とは思はなかった!」
「なんでだ?」
「だって、日本人じゃジャックの一物がデカすぎて入らないと思っていたし」
はぁ!?ちょ、ま!
「ほう。」
香里奈!!絶対面白いと思いながら聞いているだろ!!!聞くなバカ!
と、心の中では思うが、香里奈とノンというなんかよくわかんねぇけど怖そうな2人に文句を言えるはずもなく(元は俺が悪いし)俺は大人しく聞き手に徹する。
「あと、アジア系にしては少しばかりに彫りが深かったからね。黒髪に染めているヨーロッパ系とばかり。」
記者の戯言と思っていた。と言って俺の顔をみてくるノンに、俺は全力で眉を寄せて嫌です。という顔をしてやる。
「香里奈。」
まじまじとみてくるノンを、全力で顔を逸らして体を押す。
「近い!」
「もっと顔をよく見せておくれ。あぁ、やはり日本人は幼く見えるね。」
「るっせぇ!てか、近づけてくんな!」
グイグイと近づいてくるノンに、本気で殴っていいかを思案する。ノンの後ろの黒服は何も言わずに眺めるだけなので、多分何しても怒られない気がする。
「おい、始まるぞ。」
「え?」
「あぁ、もうそんな時間か。」
意味の分かってない俺とは裏腹に、ノンはあぁ、そうだったね。と言いながら俺を解放して香里奈が向いている方を向く。俺も気になってそっちを見ると、そこに映し出されているのはジャックだ。
ジャックの、記者会見。
ゴクリと唾を飲む。香里奈とノンは、さっきまでの緩い空気が嘘のようにピリッとした顔つきでテレビを眺めている。
『では、質問がある方から挙手を』
弁護士?司会者みたいなやつがそう言った瞬間いっせいに手が上がる。
『では、前から三列目の方』
『はい!ドーランド社のエゼルと申します。ジャック選手!熱愛の相手は男性との事ですが何故でしょう!?』
記者の質問が終わり、ジャックが眉を寄せてマイクを手に取る。その瞬間一斉にフラッシュがたかれるが、ジャックな慣れたように口を開く。
『別に、好きになったのが男だっただけだ。』
『って、ことは!もとも.....』
『質問は1人1問だけです。はい、次。』
バッサリと記者の言葉を切った司会者に、おぉ。と思いながら次に当てられたおっさんをみる。
『カルシル社のゲールだ。男が好きだったって、今まで応援してくれているファンに失礼とはおもわねぇのか?』
『あぁ?なんでだよ。別に俺があいつを愛してたってプレーに支障がある訳でもねぇ。てか、お前らが知っての通り、俺は今まで以上にキレキレでプレー出来てんだろうが。』
喧嘩を売るような言い方に香里奈は笑い、ノンも苦笑している。俺?俺はひきつることしか出来ねぇよ。
『はい、次』
『元から男性が好きだったの?』
『んなわけねぇだろ。あいつだけだ』
『はい、次』
『NBAの契約切られるって聞いたけど、どんな心情?』
『あ?あんなくそデブのとこなんてこっちから辞めてやる。』
『はい、次』
『彼の事は本気?』
『本気じゃなかったら親に合わせるわけねぇだろうが。両親が来た瞬間追い出す。』
ゴクリと唾を飲む。嬉しいとか、いま言うのかよとか、よくわかんねぇ感情がぐるぐる回る。
「愛されるなぁ」
「いいですねぇ。」
香里奈とノンの言葉に睨みつけるが、効果はないまま笑って流される。
『はい、次』
『世間の風当たり強いと思いますが、これからどうされるおつもりですか?』
ゴクリと唾を飲む。
『あ?知るか。てめぇらの意見なんて聞いてないんだよ。俺は、あいつと一緒に海行ったり街歩いたりふつーに恋人とすることを出来たらいいんだ。少しバスケで有名だからって、てめぇらにごちゃごちゃ言われて恋人との仲を引っ掻き回される筋合いはねぇ。』
けっ!と言いながら答えるジャックに、大量のフラッシュがたかれる。
「恋人といると追いかけ回されるのは、有名になった宿命だろう。」
「いや、有名になったからってただの人だからねぇ。恋人との時間は邪魔されたくないのは分かるなぁ。」
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