よし、逃げるか

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3日後。 家に帰る予定日がやってきた。この3日間ずっとジャックの熱愛報道と記者会見が世間を賑わせており、毎日のニュースで見ない日は無かった。 「本当に今日帰っていいのか?」 「あぁ、いいからサッサっと帰れ。」 「それ、早く帰したいだけだろ。」 「あぁ。」 キッパリと言い切る香里奈におい。ツッコミながら、楽しそうにサージとディとグレイとトランプをしているノンを見る。この3日間でノンとファフニールの5人は急激に仲良くなった。え?1人増えたって?ハッハッハッ、俺が相棒であるミゲルの事を忘れるわけ無いだろ。 あとから合流したミゲルはノンとの契約のことを聞き、自分のことのように喜んでいた。そして、この3日間で決まった契約は3つ。 一つ、事態が収まり次第ファフニールの練習をノンと監督予定の人が見に来る。 一つ、ファフニールの主力メンバーは確実に新チームに入る事。 一つ、年棒の契約は5年固定であること。 3つ目に関しては、ジャックの年棒は今年の全米ストリートバスケ本戦で優勝すれば6000万ドルスタートとなった。結果次第ではこれ以上上がって行く手はずだ。ははっ、6000万ドルって6億だな。6億!?となったのは秘密だ。実際、ストリートバスケの大会で優勝すれば、3000万ドル程の稼ぎになるらしい。今まではそれを、チームで分けたり、活躍しだいで分けていたからだいたいそれに近いレベルの稼ぎがあったとかどうとか。そうなの。 「で、なんか忙しくしてたけど用事は終わったのか?」 「.....ふふっ、まぁね。」 俺に気づかれていた事に驚いたのか、珍しく目を見開いた香里奈はクスりと笑って紅茶を飲む。酒を飲んでいた時に見せていた目の下のくまも取れて、香里奈のピリピリとした雰囲気も軽くなった。 「そりゃあ、良かった。」 「まぁ、あんた達が毎日のように発情してなければもっと良くなってた気がするけどね。」 「なっ!」 してやったりとばかりに微笑む香里奈に、俺は、恥ずかしくて顔が赤くなる。 「なんで知ってるのか?って?」 「いや、あ〜うん、まぁ。」 両手で顔を覆いながら縦に首を振ると、香里奈はくすくすと笑う。 「毎日あんた達の横の部屋の奴らから苦情が来てた。」 「嘘だろ。」 「本当。まったく、いくら防音に優れていても、壁にぶつかってたらそりゃあ聞こえるわな。」 「〜〜〜っ。ごめん。」 確かに、ちょっとベッドが狭かったから俺の背中を壁に当ててやったし、声が響くふろ場でもやった。聞こえてたのか。と思いながら指の隙間から香里奈を見ると、楽しそうに笑っている。 「まぁ、今日には家に帰るから好きに喘いでいいんじゃない。」 「声出さないように練習します。」 「なに?そういうプレイに目覚めたの?」 「違う!」 高校生が何を言っているんだ!と言うと、香里奈は年相応の笑顔でくすくすと楽しそうに笑う。 「ちょ、大事件です!!!」 ガタガタと音を立てて入ってきたミゲルに、全員の視線がそちらに注がれる。あ、ノンがイカサマの種仕込んだ。 「なんだ?」 サージの問いかけに答える前にミゲルがゴクリと唾を飲む。 「き、記者がほとんど居ません!!」 え?っとミゲルの言葉に全員の動きが止まる。グレイなんかカードを手から落としそうになるほど驚いている。 それより、えっと?はい?記者が居ない?いないってあれだよな、消えたってことだよな。え? 「「「「えぇ!?」」」」 「あぁ!?どうゆう事だよ!」 「分かりません!居ません!!」 「なんで!?なんも事件は起きてないだろ!」 「分かりません」 「いつ消えた?」 「分かりません!」 いや、お前ら少し落ち着け、ミゲルが困ってる。 「消えたらラッキーってだけでしょ。早く出る準備をしなさい。」 「そうだね〜、居ないうちに逃げるべきだっよ!はい、勝ち〜」 「「「あぁ!!!」」」 ペいっとカードを捨てたノンが勝利宣言をすると共に、他3人が崩れ落ちる。いや、ガッツリイカサマして勝ったけどな、まぁ、金かかってんならそんぐらいやるわな.....じゃなくて! 「え、いなくなった?」 俺がそう言うと、ミゲルが首が取れそうなぐらい頷く。 「全部って訳じゃねーけど、めっちゃめちゃいたのが数人になってる。」 「なんで.....」 「まったく、そんなに考えていても仕方ないだろ。居ないうちに早く帰れ」 シッシッと手を振りながら帰るように促してくる香里奈。うん、お前が帰らせたいって気持ちはよーくわかった。 ガチャ。扉が開く音が聞こえ、そちらを向くとジャックが入ってきていた。 「なに騒いでんだ。特に3人の声は廊下まで聞こえてんぞ」 3人と言えばノンに負けた3人だ。うん、うるせぇもんな。 「だって!だって!!イカサマしたのに負けた!」 「こいつ金だけじゃなくて、神様にも好かれてんだぜ!」 「世の中不公平だ。」 3人の言葉にジト目で虫けらを見るように見る。選ばれた側の人間が何言ってんだ。身長が高くて、顔も悪くなくて、ジャックの稼いでる金額からこいつらも金持ちってことが分かる。てか、車から金持ちが染みでている。嫌味かこんにゃろう。 「イカサマしたお前らが悪いんだろうが」 「ノンもイカサマして勝ったからどっちもどっちだろ。」 「「「んだってぇ!?!?」」」 「え〜、功祐ばらさないでよ〜」 ヘラヘラと笑っているのんにつかみかかっている3人を放置し、ジャックはエナメルバッグいっぱいに入った服と日用品を肩に担ぎ直す。 「じゃあな、香里奈。世話になった。」 「あぁ、二度と来るな。」 「へいへい。」 するりとジャックが俺の手を掴んで恋人繋ぎにする。そのまま、ジャックが俺の手を引こうとするので急いで6人に手を振る。 「世話になった!」 ノンを問い詰めている3人は反応しなかったが、香里奈は手を振り、ミゲルもキノコを生やしながらも手をかすかに振り、ノンもガクガクとゆらされながら俺に手を振る。よく吐かないなお前。 直ぐに部屋の中が見えなくなったので前を向いて歩く。相変わらず手は繋がれたままだ。 「ったく、うるさい毎日だ。」 「ははっ、いいじゃないかたまにはみんなでお泊まり会とかも。」 「そうかよ。」 わしゃわしゃと俺の頭を撫でるジャックに、俺もジャックの頬をするりと撫でることで答える。 「帰ったら何する?」 「お前が足りない。」 「じゃない!飯は!?」 「飯よりお前。」 「却下!」 お前はそれしか頭にないのか!と返しながら、いつもは人が溢れかえるBARのホールを抜ける。しんとしたホールは珍しく、ついついぐるりと眺めてしまい、ジャックに手を引かれる。 「じゃあ、買い物に行こう。」 「え.....」 こいつ馬鹿なのか?と思いながら見ると、ジャックは鼻を鳴らして笑う。 「見せつけたいんだよ。お前が俺のだって。」 「は.....?」 香里奈が用意してくれた車に乗り込むために、足を止める。車の扉を開けて荷物を投げ込むジャックを見ていると、フイにジャックが俺のおでこに近づく。 1歩離れる、が、その前にジャックの腕が腰に回されてゆっくりとおでこに唇が触れる。 「ようやく人目を気にせずイチャつけるんだ。買い物に行こう。」 「なっ.....なっ、お前!」 ははっ!と笑いながら車に乗り込み、俺の腕を引くジャックに、もちろん敵うはずもなく簡単に引きづり込まれてジャックの腕の中に収まる。
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