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哀しい人
「雨、やみませんね」
「え?雨なんて……」
今日は、快晴だ。
この人は、何を見ているのだろう。
「降っていますよ。先週から、ずっと」
不思議な人だ。
どこか、違う景色が見えているのだろう。
「貴方には、見えるのですね。私には、雨は見えません」
「それは、とても哀しいことですね」
そうだ。
私は、哀しい人間なのだろう。
「そうですね。哀しいです」
「それは、よかったです」
嘘だ。
哀しいことの、何がいいのだろう。
私の顔には、怒りが浮かぶ。
「雨、見えましたか?」
「いいえ。私には、雨は見えません」
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