【短編】LUNATIC PARTY

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 崇純さんの乾杯の音頭で、いつもの無礼講が始まる。それも何だか、今日ばかりは感慨深い。  ナイトメアのスタッフとして打ち上げに出るのも、今日が最後。  僕は何しろ機材に触れなかったので、おつかいだのヘアメイクだの使いっ走り関係ばかりだった。でも、すごく楽しかったし、そんな僕を使ってくれたメンバーには感謝の気持ちでいっぱいだ。  ジーラスに通うようになったのも大部分はこの為だし、ルージュレイズに加入してジーラスのステージに立てるようになったのもこのお陰だし、結局こいつとの仲を取り持ってくれたのも…。 「なに呆けてんだ、龍樹」  玲次…。僕は思い出に浸ってるんですけど。 「呆けてんじゃなくて、ノスタルジーに」 「何がノスタルジーだ。カタカナ使ってもサマんなんねぇよ」 「お前よりは似合うよ」  せっかくの感傷もぶち壊しだ。まったく、ロマンのないやつ。  彼がこの可愛い可愛い恋人の記念すべきローディー卒業の日に、花を持って駆けつけたのかと言うと、お察しのように完全なるハズレである。  地元で久し振りにナイトメアが見られる。そんだけの話なのだった。単なるナイトメアファンじゃん。
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