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ひとりごちて解き始めるが、どうしたものか、きつく巻きついてしまって取れない。それに、引っかかっているところを目視出来ないので上手くいかない。
「何でだよ、おい」
どうにか安全ピンの方を衣装から外したが、傷んだ髪は簡単には解けない。
切るしかないだろうかと考えながら、しかしなるべく切りたくはないので、ちまちまと指先で外す作業にかかる。
「何やってんだ?」
その声にふと顔を上げると、ステージに一人の男がしゃがみこんでこちらを見て微笑している。
黒いストレートの髪を長く伸ばし、崇純とは対照的な白い衣装。さっき挨拶をした中にいた。
ノアールラムールの、ヴォーカルだ。
初めて会ったばかりで、名前が出てこない。彼は笑みを浮かべたまま、崇純の目を見つめている。
その余裕ある視線が、崇純をますますイラつかせる。
「何だよ」
彼の目を睨み返す。彼は少し驚いたように、目を丸くする。
「何笑ってんだよ」
「は?」
「バカにしてんじゃねぇよ!」
耐えきれず、怒鳴ってしまった。すぐに、自分で面倒を起こしてしまったことに気付いて更にイライラする。
「何を?」
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