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肩を思い切り叩かれ、やっと周囲の様子に気付く。
「崇純、置いてくぞ」
忍ににらまれ、笑って誤魔化す。
「もうちょっと」
「置いてく」
冷たい言葉に頬を膨らませ、アッシュを振り返る。
「…だってさ」
「来月な?」
アッシュは笑って、崇純を宥めるように言う。頷きながらも、言い残したことは沢山あった。
「お前がもっと早くはっきりしてくれてたらなぁ」
「ツアーの間中、ラブラブできたのに?」
「そうだよ! 一緒にいる時間、たくさんあったはずなのに」
頭を撫でられながら、拗ねてみせる。
「今度な」
「絶対だぞ」
アッシュと共に、機材車に戻る。助手席に乗り込むと、ユージがエンジンをかけた。
「乗れば?」
手招きをすると、アッシュは苦笑して首を振る。仕方なく、繋いでいた手を離し、ドアを閉めて窓を開ける。
彼が口を開いたけれど、古いエンジンの音で上手く聞き取れない。窓から乗り出して、彼の口元に耳を近付ける。
「来月、前乗りするからな。あけといてくれ」
嬉しくなり、満面の笑顔で頷いて返す。
「崇さん、崇さん」
狂絵に背中をつつかれ、名残を惜しみながら小指を絡ませる。
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